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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

環境学と私

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都市環境学専攻 持続発展学系
谷川 寛樹 教授
本教員のプロフィール

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図:日本全体の物質ストックの分布
(Tanikawa et al 2015)
2009年4月に工学研究科に着任し、同年末に環境学研究科に移りました。
この「環境学と私」の原稿依頼を在籍10年でいただいたのも一つの節目のような感じがしています。原稿執筆にあたり過去2007年からの「環境学と私」の記事を見直していましたが、若かれしころの先生方や、既に退職された先生方を拝見することができ、環境学研究科の変遷を実感しております。
研究面では、過去四半世紀ににわたり「都市の重さ」を計測しています。これは私たちの体重を計測するのと同じように都市の重さを計測し続けることで、都市の健康状態(持続可能性)が見えてきます。都市の重さと言っても想像しづらいですが、例えば、建物や道路に使われる資源の種類と重量が把握できれば、これから必要とされる資源量や将来のリサイクル資源量、さらには気候変動に大きく影響する温室効果ガス排出量について考えることができます。このようなの研究により、我々の社会で蓄積し、利用している物質量は世界全体・過去100年間で23倍に膨れ上がっていることがわかってきました(F Krausmann, H Tanikawa et al 2017, PNAS)。この量は伸び続けていて、このままいくと莫大な資源が必要となり、気候変動を加速し、持続可能性が損なわれるのではないかと危惧しています。そのため、国際的な研究チームをつくり、その成果をもとに国際学会(ISIE: International Society for Industrial Ecology、産業エコロジー国際学会)を中心に議論を進めています。これらの成果は国連環境計画(UNEP)などの報告書としてまとめてきました。
このような国際的な研究活動には研究室内の国際化も大切です。世界各国からの留学生を受け入れ、日本人学生の国際化にも力を入れています。教育面では、特にNUGELP(Nagoya University Global Environmental Leaders Program、名古屋大学環境人材育成プログラム)を通じて、環境学研究科の国際化にも取り組んでいます。研究室のゼミでの使用言語は全て英語、NUGELP所属の学生は留学生、日本人を問わず、論文執筆は全て英語で行います。そのためか、期せずして日本人学生は修了時に英語で結構なことが言えるようになるのは私にとって嬉しいことです。
これから気候変動に合わせて我々の生活を見直していく必要があります。都市を構成する建築物や道路、上下水道、港湾施設、堤防といったインフラは我々の大切な生活基盤です。持続可能性を担保しつつ、気候変動に適応するために今後ますます都市重量の計測は大切になると感じています。10年後、2030年にこの記事を読んだ時に少しでも我々の研究成果が社会に活かされていることを願い、物質ストック・フローに関する研究を進めていきたいと思います。
(たにかわ ひろき)

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