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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

地域から愛される企業づくりに向けて

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社会環境学専攻 環境政策論講座
涌田 幸宏 准教授
本教員のプロフィール

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株式会社秋川牧園の視察。
右から2番目が秋川實会長。
昨今、CSR(企業の社会的責任)やソーシャル・ビジネスという言葉をよく耳にするようになりました。私が、こうした問題について考え始めたのは1990年代初頭、産能大学主催の研究プロジェクトに参加したのがきっかけでした。21世紀のあるべき企業と期待される人材像とはどのようなものなのか?大企業・ベンチャー企業へのアンケート調査やインタビュー調査を実施したところ、将来求められる企業モデルは、社会貢献を積極的に企業の戦略に組み入れ、従業員の生きがいを創出するオープンな組織、というものでした。そこで我々は、「経済」、「環境」、「社会」、「従業員」という多様な価値を重視した企業を「ソシオ・ダイナミクス企業」、社会価値創造に取り組む中核的人材を「社際企業家」と命名し、大企業の管理者を集めた成果発表会も催しました。しかし、評価はあまり芳しくなく、この議論が明示的に取り上げられることはほとんどありませんでした。
1990年代後半になると、「社会的企業」、「社会企業家」、「トリプルボトムライン」などの概念が海外で提唱され、日本では2003年がCSR元年と言われるようになりました。現在、大企業を中心にCSRという言葉はかなり浸透してきましたが、いまだに「CSRは事業活動の足かせ」という発想が根強いのも事実です。CSRというような仰々しいネーミングもなじみにくい原因のひとつかもしれません。
昨年から、県の関係で「愛知CSR推進研究会」の座長を務めさせていただいています。いま、横浜市などの地方自治体で、中小企業のCSR認証制度を設ける動きがあり、その愛知県版を作ろうというものです。ここでは、地域に密着した中小企業という観点から、CSRとは言わずに、「地域から愛される企業づくり」を念頭に置いています。研究会はまだ途についたばかりで、「愛知型とは何か」、「参加のインセンティブをどうするか」など検討しなければならない課題はまだまだあります。しかし、これを機会に、あらためて地域活性化に取り組む企業家活動やソーシャル・ビジネスについて研究をさらに深めていきたいと思っていますし、何よりも、地域を愛し、愛される企業が少しでも増えていけばよいと切に願っています。
(わくた ゆきひろ)

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