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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

環境学における建築材料学教育と私

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都市環境学専攻 建築学系
五十嵐 豪 准教授
本教員のプロフィール

私は,2014年に環境学研究科で博士号を授かり,東北大,東大で大学教員としてのキャリアを積み重ね,8年半ぶりに教員として戻ってきました。2023年度からは,丸山・五十嵐研究室として恩師と共同で研究教育を進めていきます。学生当時の私にとって環境学は,きっかけは工学部環境土木・建築学科(当時,社会環境工学科)から延長して建築を専攻する選択をしたにすぎませんでしたが,体系理解科目や研究活動を通じて,古典的な学問分野を環境という側面から横断的に理解する学際の重要性を学びました。
私は主にコンクリート材料分野を専門としておりますが,現在この分野では急速に脱炭素化の取り組みが行われています。これは,ESG金融や持続可能な開発目標(SDGs)の動きによって、カーボンプライシングなど経済活動と脱炭素化への社会的責任のベクトルの向きが一致することで,加速的に脱炭素技術への期待が増しているためだと思われます。このとき建築材料学という学問分野からグリーンイノベーションを起こすには、いかに化石燃料由来のエネルギーに頼らずにCO2を固定化できるか,単に建築士指定科目としての建築材料学の理解にとどまるのではなく、天然鉱物の熱力学的安定性,セメント鉱物と水,CO2との化学反応,粒子表面における反応速度といった,地質学,物理化学,材料工学などの学問を横断的にとりこみ,それを基礎に発案できるような学際の理解が重要となってきます。これはまさに環境学で学びとったアプローチです。
教員として戻ったいま、建築・構造物の集合で成り立つ都市環境が,激甚化する気象災害や巨大地震といった自然環境から受ける影響に加えて,サプライチェーン全体での炭素排出などの自然環境へと与える影響と調和し、持続的かつ利便性のある都市環境となるために,どのような技術・ルールが必要となるのか,そのようなことを想像できる人材教育をいかに進めていくか試行錯誤する毎日です。そのような中,昨今の国内のサッカーやお笑い分野をみていると,教育の力をひしひしと感じ,励まされております。両業界が養成所設立やプロリーグ発足から隆盛に至るまで40年近くかかっていることから察するに,母数にもよるかと思いますが,その教育体系で成長した人間が指導者(集団)となってようやくフィロソフィーが共有されるのではないでしょうか。2001年に誕生した環境学研究科の理念を実現できるように,学生時代に受け取ったフィロソフィーを環境学の教員として次世代に継承していけるように研究教育に携わっていきたいと思います。
(いがらし ごう)

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