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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

大気微粒子の観測研究

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地球環境科学専攻 地球水循環科学講座
大畑 祥 助教
本教員のプロフィール

私は、大学の学部生の頃に授業で聞いた「微粒子が気候を変える」という話に惹かれて、この分野の研究室に入りました。温室効果気体の地球温暖化への影響はよく耳にしていましたが、大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)も気候に複雑な影響を及ぼしていることは、当時は知りませんでした。また、温暖化への適応方策の1つとして、海洋上で人工的に海水由来粒子を大規模に巻き上げて小さな雲粒を生成し、地球の放射収支を制御しようとするジオエンジニアリングの話題が授業で触れられたことも新鮮でした。様々な化学成分のエアロゾルが、どこから運ばれてきて、どのように大気中で物理的・化学的に変化し、大気から除去されているか、また、気候や環境にどのように影響を及ぼしているかについては、分かっていないことが多く、漠然と、「もしかしたら自分でも何か新しいことを見つけられるかもしれない」と感じたことを覚えています。
エアロゾルの動態・性質と気候・環境影響を研究するためのアプローチは多岐に渡ります。装置開発・室内実験・観測(地上・航空機・船舶・衛星など)・数値シミュレーションなどの中から、自分の興味や強みを活かして取り組むことができます。私は特に、化石燃料等の燃焼で発生し大気を加熱する効果を持つブラックカーボンや、氷雲形成のもと(氷晶核)として重要な働きをする鉱物ダスト等のエアロゾルを対象に、新しい装置や分析手法の評価と野外観測による研究を進めています。
最近では、2022年3月に北極域のスピッツベルゲン島(ニーオルスン)での地上観測、7月に北海道東方沖での航空機・船舶観測に参加しました。北極域は地球全体の平均よりもはるかに速いペースで温暖化が進行しており、そこでエアロゾル・雲がどのような役割を果たしているか明らかにすることが求められています。また、西部北太平洋は下層雲が頻繁に出現することから地球の放射収支にとって重要な領域であり、そこで水雲や氷雲形成に寄与しうるエアロゾルの存在量や供給源を明らかにしたいと考えています。
新しい測定手法を詳細に評価し、それを用いて地球科学的に重要と考えられるフィールドでその瞬間・その場所でしか取れないデータを取る。このようにして得られた独自性の高いデータを丹念に解析し、新しい知見を得ていく過程に、楽しさとやりがいを感じています。
(おおはた しょう)

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