ホーム > 環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

EBPMとこれからの環境政策

顔写真

社会環境学専攻 2009年度博士後期課程修了
山形大学学術研究院教授・データサイエンス教育研究推進センター長
九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター客員教授
鈴木 千賀

皆さんはEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)という言葉をご存じでしょうか?政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づいて形作る。シンプルに言えば「統計学を用いた政策立案やその評価」を意味する言葉です。環境政策の新しい切り口として今、注目されている分野でもあります。私は、環境学(とりわけ水産海洋系)をベースとしたEBPMを専門とする学者です。行政官の皆さんと協調しながらこの複合的な研究を20年以上続けてきました。
同時に、私は、子どもの頃からプランクトンの異常増殖現象である赤潮にも魅了されてきたのですが、この赤潮の対策こそがEBPMにマッチした環境政策課題でもあり、世界の水環境行政の要ともなっています。赤潮を考える上では、例えば、水分析やリモートセンシングでの追跡、潮流調査や港湾環境整備、水規制や環境影響評価などもその対策法として挙げられます。一筋縄で解決出来るものではありません。
今、私が、院生らと進めている「統計学を用いた赤潮の制御と環境影響評価」の研究などは、この赤潮発生の汎用的な予測モデルを構築することで水質管理者や環境政策担当者等の実務者に対して貢献することを目的にしています。これまで赤潮発生の予測モデルは、数値シミュレーションが主でしたが実務者が利用するにはコストが大きく予測精度の評価が不明確である等の短所がありました。
データサイエンスブームを皮切りにこの10年の統計学の発展には目覚ましいものがあり、統計と環境政策の深化により、既存モデルの短所を克服し、実務者の利用に資するモデルの構築が可能となると考えております。私の指導院生らも皆そうですし、私もそれこそ統計学を学んだのは大学院に入ってからでしたので、院生(後輩)の皆さんも環境政策のツールとしての統計学を簡単に習得することが出来ます。EBPMに挑戦してみませんか?
(すずき ちか)

PAGE TOP