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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

様々な空間・時間スケールでの事象を繋げて考える視点

顔写真

地球環境科学専攻 2018年度博士前期課程修了
産業技術総合研究所
石野 沙季

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地質図作成のための航海で観測機器の整備をしているところ
環境学研究科に在籍していた時の研究は,珪藻化石の分析を通して地層がつくられた時代や過去の海洋環境を明らかにするというものでした.植物プランクトンの1グループである珪藻は顕微鏡で観察するほどの小さな生物です.しかし,小さくとも種の移り変わりや化石の観察結果から得られる情報は多く,地球環境変動や生物進化に関わるダイナミックな議論に繋がることが魅力的でした.
そんな珪藻ばかりが映っていた私の視野を大きく広げるきっかけとなったのは,国際深海科学掘削計画(IODP)の研究航海への参加でした.研究航海は南極の過去の海洋環境を知ることを目的としており,船上では様々な分野の研究者と共に掘削した海底の堆積物を分析しました.船上で交わされる議論の内容は,ミクロンスケールの生物化石や数百mの堆積物の分析結果,数十kmスケールの海底の探査結果など多岐に渡りました.修士課程の学生だった私は研究の話を聞くだけで精一杯でしたが,これらの研究成果が繋がりあって一連の環境変動の理解に貢献していることを実感しました.
私は現在,地質調査総合センターで海底地質図を作成する仕事をしています.海底地質図とは,海底にどのような種類・時代の地層が分布しているのかを記した地図で,国の重要な知識基盤の1つです.日々の業務では調査航海に出て,海底下を可視化する探査をしたり,岩石試料を採取して成分や時代を調べたりしています.調査で得たデータと向き合う際は,調査海域の火山や地震,海洋環境,生物など様々なトピックとの関わりに目を向けて研究を進めることも求められます.
現在の仕事と学生時代の研究は全く異なる分野です.それでもこの仕事を目指したのは,海底の地層をもっと多角的に理解するため,より大きな空間スケールでの研究をしてみようと思ったのが発端です.過去の研究と異なる分野に挑戦できているのは,学生生活を通して様々な空間・時間スケールでの事象を繋げて考える視点を得られたおかげです.この視点を大切にしてこれからも仕事に励んでいきたいと思います.
(いしの さき)

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