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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

海洋環境を実感する

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地球環境科学専攻 大気水圏科学系
三野 義尚 助教
本教員のプロフィール

2021年12月18日から2022年1月13日の期間、西部北太平洋の亜熱帯海域における観測航海に参加しました。 出港日は全国的に真冬の寒さでしたが(しかも海況は大時化)、北緯27°まで南下すると気温が20℃まで上がり、観測がない時はTシャツ短パン生活です。 船内に配信される共同通信ニュース「1月6日に寒波襲来、都心で最深積雪10センチ」を読んでもピンこないし、「東京の新型コロナウィルス新規感染者数1000人超える(1月8日)」も、 オミクロン株??航海前は20-30人だったのに・・・といった具合に、わずか数週間で陸上の出来事からすっかり置いてかれます。 その一方で、海洋環境のリアルを感じることができます。舷から海面を覗くと、TVのニュース映像で観た、沖縄に大量漂着したモノと同じ起源の「軽石」が帯状になって漂流しているし、 海表面付近で採取ネットを曳くと、想像以上の数のマイクロプラスチックが入っていました。 海面浮遊物の例を2つ挙げましたが、私自身は、海中を自重で沈む非生物粒子(通称:マリンスノー)に着目して研究を行っています。 非生物と言っても、マリンスノーに含まれる有機物は、大気から海洋表層に溶け込んだCO2を材料にして光合成によって作られています。 このため、マリンスノーの沈降は、大気中のCO2の一部を海洋内部に隔離し、人為起源CO2が大気に蓄積するのを軽減する働きがあります。 この部分を定量評価するため、マリンスノーを時系列で捕集する装置を海中に約1年間係留するといった実験を他の研究機関と一緒に行っていて、今航もこの装置の回収と再設置がメインの観測でした。 この実験によりマリンスノーの量と質の経時変化を調べることが可能になりますが、係留機器の紛失リスクはゼロではありません。 なので、回収時はいつもドキドキの連続です。熟練の乗組員や観測技術員の協力のおかげで、今回も無事に全機器を回収できました。 達成感で高揚しつつ、時系列サンプルにどんな面白い現象が記録されているのだろうと夢想します。 しかしそれも束の間、再設置の準備です。回収の数日後には「来年また会えますように」と願掛けをして、装置を海中に投入しました。 そして数回の荒天待機を挟んで全観測を終えて、清水に帰港しました。新規感染者が急増していたタイミングでしたが、27日も洋上生活すると、上陸はすごく嬉しいものです。 このような航海を年に1、2回参加して様々な試料を採取し、大学でそれらを分析・解析しています。 なかなか骨の折れる船上作業も多くて、年々体力的に厳しいかなと感じるようになってきましたが、現在の海洋環境を実感できる貴重な機会だと思っています。
(みの よしひさ)

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