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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

どのようにではなく、何のために建築を作るかを考える

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都市環境学専攻 建築学系
李 燕 助教
本教員のプロフィール

10年前、留学生として名古屋大学の環境学研究科において建築学を学び、その後は建築設計事務所で勤務し、6年間建築の設計業務に努めました。この度は助教として母校に赴任し、とても感慨深いです。
大学の研究者になった理由は「どのようにではなく、何のために建築を作るか」を考えたいからです。設計事務所では商業や公共施設などの複合施設を中心に設計業務に携わり、大きくは敷地全体における建物の配置から、小さくはボルト一つの位置まで、建築の隅々まで考えながら、建築設計を行ってきました。一方で、建築設計者である限り、個々のプロジェクトにおいて、求められる物理的な建築物や空間を実現することはできますが、公共施設の今日的な役割を果たすための、施設の提供サービスや実際の運用まで踏み込んだ建築提案を行うことは困難だと感じました。このような思いから、今後は研究者として「何のために建築を作るか」について提言できる研究に注力したいです。
これまでの研究では海外の公共図書館を研究対象に、地域ニーズや課題に応えるサービスを図書館に導入しながら、図書館の立地、建築空間を総合的に再整備した先進事例を通じて、公共図書館の「量と質」の双向的に再編プロセスについて考察して来ました。近年、公共図書館は様々な市民が集い、滞在する施設として、駅や商業エリアなど利便性が高い場所に立地し、商業や他の公共施設と複合されるなど、建築的にも提供サービス的にも大きく変化しています。今後は、人口減少による都市資源の集約化や公共施設の総量抑制が予想される中、私は公共図書館を含む公共施設に対して、単に総量縮減における公共施設の集約化・複合化の方法を探るだけでなく、今日的な社会ニーズに応じる新しい公共サービスと建築空間を包含する公共施設のあり方とその再編方法について考察したいです。
地球温暖化や少子高齢化、人口減少など、都市や地域を取り巻く環境が大きく変化している中、私は縮小しながらも豊かになる都市や地域の持続的な安定化に貢献できる建築のあり方について、研究成果に基づいた社会実装とその検証も行いながら考察し、その研究成果を社会に向けて発信したいと思います。
(り えん)

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