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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

ゴンドワナ大陸の形成・分裂からユーラシア大陸の形成まで

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博物館(地球環境科学専攻 地球史学講座)
束田 和弘 准教授
本教員のプロフィール

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南極での地質調査.極寒の南極では,短い夏の期間だけ地質調査が可能となる.
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三畳紀の大陸配置.http://www.scotese.com/late1.htmを元に作成.
現在,地球には6つの大陸(ユーラシア,南北アメリカ,アフリカ,オーストラリア,南極)と,5つの大洋(北極海,太平洋,大西洋,インド洋,南極海)が存在します.地球は46億年の歴史を通じて,ずっと同じ姿だったのでしょうか? いえいえ.昔の大陸配置は現在とは全く異なっており,過去,大陸どうしが何回も分裂と融合を重ねて,現在の姿になったと考えられています.その中でも大きなイベントとして,「ゴンドワナ大陸の形成と分裂」,「パンゲア超大陸の形成と分裂」,「ユーラシア大陸の形成」の3つが挙げられます.私はこの3つのイベントを軸に地球史を捉えるべく,南極やモンゴル,アラブ地域で地質調査や,岩石化学・構造地質学・年代学的研究を進めています.
カンブリア紀の生物大爆発より遥か昔の原生代,現在のアフリカと南アメリカからなる「西ゴンドワナ大陸」と,南極・インド・オーストラリアからなる「東ゴンドワナ大陸」が衝突し,「ゴンドワナ大陸」が誕生しました.その衝突の証拠は,現在のアフリカ大陸東部や南極大陸西部に残っています.南極西部には,変成岩や変形岩などが広く露出しています.それらの岩石の変成史・変形史を詳細に読み解くことによって,東西ゴンドワナ大陸は約6億5千年前に衝突のピークを迎え,約5億5千年前頃には「ゴンドワナ大陸」の形成が完了したことが,日本の南極観測隊の調査でわかってきました.
そして,約3〜2億年前の石炭紀〜ジュラ紀の頃には,アメリカやヨーロッパなどが衝突・集合してできた「ユーラメリカ大陸」と「シベリア大陸」,「ゴンドワナ大陸」の3つが衝突し,「パンゲア超大陸」が出現しました.地球上のほとんどの大陸が“一つの超大陸”として集合した,地球史上の一大イベントです.この「パンゲア超大陸」の出現によって,恐竜は中生代以降,世界中にその生息範囲を広げることになりました.2億年前くらいになると,「シベリア大陸」と「ゴンドワナ大陸」の間の大洋(テチス海)に点在していた,中国や東南アジアの小大陸が「シベリア大陸」に向かって北上し,“アジア”の形成が始まります.当時の「シベリア大陸」と「北中国大陸」の間には「モンゴルオホーツク海」という大洋が存在しましたが,その大洋が閉じてシベリアと北中国が衝突・融合した証拠がモンゴルにあります.
その後,1億8000万年前くらいから,「パンゲア超大陸」は分裂を始め,次第にバラけていきます.そして1億年くらい前には,現在の大陸(ユーラシア,南北アメリカ,アフリカ,オーストラリア,南極)が別々になっていたとされています.しかしアラビア半島やインドは,この頃まだユーラシアの一員ではありませんでした.これらがユーラシアに加わったのは,本当につい最近,数千万年前の頃です.アラビア半島がユーラシアと衝突した証拠は,イラクやシリア,ヨルダンなどにあります.
そんなわけで世界中を飛び回っている私ですが,南極では雪と氷が織りなす幻想的な美しさに息を飲む一方で超過酷な自然の猛威に人間の無力を痛感し,モンゴルでは灼熱の野外調査で体中の水分を持って行かれて生死の境をさまよい,アラブでは過激な原理主義者が多いのかと思いきやそこには我々と同じ普通の人間の営みがあり,ちょっとほっこりしたその次の年には多国籍軍の空爆で見知った街が壊滅状態になる.そんな,いろんな苦労と複雑な思いとともに調査・研究を続けています.自分自身の単純に「知りたい」という欲求もさることながら,「調査研究を通じて得た経験を,できるだけ多くの学生さんたちに伝えたい」という思いとともに研究者をやっています.
(つかだ かずひろ)

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