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「総合的な学習で町づくり」
寺元 潔 著


明治図書 ISBN4-18-169500
1560円 B6版

 都市計画は江戸時代以来、日本では御上の仕事とされ、専門家が行うものであった。しかし、その状況が現在では大きく変わり、行政は都市計画に対して市民へ意見を求めるようになった。ただ、これまで大多数の市民は自分の暮らすまちがどのように計画され、運営されているのかを考える機会はあまりなかったのではないだろうか。
 そのような問題意識に立脚して、『総合的な学習で町づくり』は、西尾市の西尾小学校を舞台に、「総合的学習の時間」を利用して繰り広げられた「まちづくり学習」の実践を中心に紹介している。そして、著者は小学生時代から自分に暮らすまちを考える機会が必要であり、学校教育でも「まちづくり学習」に取り組むべきであると主張している。
 「総合的学習の時間」とは、2002年度から小中学校で、2003年度には高等学校で新たに実施される授業科目である。総合的な学習の時間は各学校の地域や生徒の実態に応じて教育活動を行い、生徒の主体的に学び、考える態度を育成するねらいを持つ。国際理解や情報、環境、福祉などの学習が総合的課題の例として示されており、「まち」を題材として総合的学習を組み立てることもできる。
 西尾小学校の教育実践では、「まちづくり学習」の小学1年生から6年生までの一貫したカリキュラムを組み、発達段階に応じた課題を提供できるように工夫されている。低学年ではまちに「愛着」を持つことが課題であり、次は「共感」、そして「参加」、最後に「提案」となっている。最後の提案では、小学6年生がかなり現実的なプランとして「西尾のまち改造計画」を提案した例が紹介されている。
 「総合的学習の時間」を経て、「まち」や「環境」を主体的に学び考えてきた学生が、近い将来、大学に入学する。その学生たちは、今まで以上に主体性を持った研究活動を行うに違いない、という想像をかきたたせるのが本書である。

【評:社会環境学専攻地理学講座 大西宏治】

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