知の共創プログラム

公開コロキウムの実施実績

2023年度全体セミナー

日時
2024年2月21日(水)13時〜16時
発表者
小林 聡、佐野 洋平、石川 綾子、岡田 美穂、櫻井 要
タイトル
ウェルビーイングの多様性 ~学際的な視点から~
要旨
名古屋大学は、「人間と社会と自然に関する研究と教育を通じて、人々の幸福に貢献すること」を使命として掲げている。また、環境学研究科では「環境と人間のウェルビーイング」を10課題のひとつに掲げ、人間のウェルビーイングを達成しつつ環境問題の解決を目指している。このように現在では、環境と人のウェルビーイングの向上のための活動への理解や共感、コミットメントが社会にも拡大しつつある。では、どのように個人や社会では、ウェルビーイングを受け取り、ウェルビーイングの向上に具体的な意義を見出しているのだろうか。知の共創プログラムメンバーは、そのキャリアも研究対象も多様である。そこで、各メンバーが、それぞれの組織や研究分野の現場におけるウェルビーイングを対象とした意識調査を行った。パネルディスカッションを通じて、今日のウェルビーイングのあり方を考えたい。

第8回公開コロキウム

日時
2024年1月25日(対面)
発表者
片岡 良美
会場
環境総合館レクチャーホール
タイトル
社会課題解決を目指す学際的な共同研究の内部者によるラボラトリー・スタディーズ――学問分野の垣根を越えた融合とは何か?
要旨
環境問題などの社会課題解決に資する学術研究のあり方として、異分野研究者の協働による学際研究の重要性が広く認識されている。一方で、学際研究の困難や、学際研究における分野間の不均衡などが指摘され、実際にそうした困難をどう乗り越えるかは、未だに当事者の暗黙知や経験則によって模索されるに留まっている。本研究では、報告者が参与した総合地球環境学研究所における学際的な共同研究プロジェクトを対象に、論文生産のような学術研究の特徴的な営みだけではなく、日常的に行なわれる会議、作成する文書なども分析の対象とする。異分野研究者間で何がどう語られたのか、民族誌的な記述と分析を行なうことで、学際研究の可能性を具体的に検証することを目指す。

第7回公開コロキウム

日時
2024年1月18日(対面)
発表者
大澤 康太郎
会場
環境総合館レクチャーホール
タイトル
市民の調査・研究活動は民主的市民科学の基盤になるか?
要旨
市民科学という概念が示す活動は、職業研究者の研究の一部に市民が貢献する「貢献的市民科学」や、市民が市民自体の抱える問題を解決するために行う「民主的市民科学」など多岐にわたる。また、それ以外にも、市民が自身の興味関心に従って趣味的に活動するような調査・研究活動もある。本報告では、市民によって必ずしも何らかの地域における課題を解決する志向を持たない形で調査や研究という活動が行われていることが、地域に課題が生まれた後に民主的市民科学のような活動を組織するための基盤として機能するという仮説を提案する。事例として、東京都八丈島における実践、および千葉県の手賀沼地域における実践を取り扱う。

第6回公開コロキウム

日時
2023年12月21日(対面)
発表者
三輪 晃司
会場
環境総合館レクチャーホール
タイトル
移動体オフグリッド構想~車両のロス回収を基軸とした人とエネルギーの新たな循環の構築~
要旨
運輸部門では走行中のCO2削減を目的に車両の電動化や水素化を推進しており、発電量不足が予想される。その中で、荷物や人を運ぶ商用車は総重量が大きく走行距離も長いため、車両への大量の電池搭載や急速充電インフラの拡充が必要となるので、車両価格も設備投資も高額なことから電動化が進まず、貨物部門単体で見るとCO2削減が難しい。ここで、担い手不足を補うために各業界で電動化とICT化を推進しており、電線に繋ぐことが出来ない場所(オフグリッド)での電力需要が増えることが予想される。これらの動向を鑑みて、車両電動化推進と一線を画して今あるクルマを活用することで、業界を超えたエネルギーマネジメントとCO2削減方法を提案する。

第5回公開コロキウム

日時
2023年11月30日(対面)
発表者
岡田 美穂
会場
環境総合館レクチャーホール
タイトル
企業が生物多様性保全に取り組む上でのインセンティブとは ― 湿地の生物多様性に着目した検討 ―
要旨
2022年の生物多様性条約第15回締約国会議 (COP15) では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30」が目標として定められた。目標達成のためには、保全地域以外での生物多様性保全の取り組みが重要であり、企業の取組が欠かせない。しかし、企業が生物多様性保全に取り組むためには、インセンティブに課題がある。特に湿地は生物多様性を保全する上で重要だが、人が利用しづらい環境であり、埋め立て等による開発で消失するリスクが高い。そこで本研究では、湿地を対象として、企業が生物多様性保全に取り組む上でのインセンティブを明らかにすることを目的とする。

第4回公開コロキウム

日時
2023年10月26日(対面)
発表者
石川 綾子
会場
環境総合館レクチャーホール
タイトル
デジタル塩基配列情報 (DSI) の利用に関するトランスナショナル・ガバナンス ― 遺伝資源たる「物」から「情報」への利益配分をめぐって ―
要旨
現在、デジタル配列情報 (DSI) を用いた研究開発は、技術革新とともに、医学、農業、環境等の様々な分野で急速に発展している。DSIは、遺伝資源の解読等の結果であるが、遺伝資源は生物多様性条約等により提供国への公正・衡平な利益配分が求められている。2022年12月、DSIの利益配分について重要な決定がなされた (COP15)。日米欧等で運用のDSIデータベースは、研究者等により全世界からオープンアクセスにより幅広く利用されているが、今後のDSIにおける国際規範の変容によっては、オープンアクセスでの自由な研究及びイノベーションが阻害される結果となる。そこで、DSIに関する国際規範及び国際交渉を分析し、国際規範の変容の状況について検討する。

第3回公開コロキウム

日時
2023年10月12日(対面)
発表者
佐野 洋平
会場
環境総合館3F講義室2
タイトル
草木供養塔(草木塔)の建立の変遷を振り返る
要旨
研究目的は、山形県置賜地域の独自の石造物である草木塔の研究とその研究成果の社会的還元を通じて地域社会の再生に貢献することである。本発表では、①1960年代から開始された郷土・民俗研究の蓄積を整理・把握し、総括する。②これまで思想家や研究者による草木塔に関する言説を整理し、その内容を総括する。③草木塔のフィールドワークを通じて得られた調査結果を基に、従来の調査分類では草木供養に関する信仰的側面のみが示され、それ以外の観察や社会的文脈から考えられる表象については示さなかった点を指摘し、新しい仮説を提示する。④草木塔の建立史を分析するうえで、今後どのような調査研究と方法が必要であるか、また、理論的言説が有用であるか、試論を述べる。

第2回公開コロキウム

日時
2023年7月27日(木)16時30分~18時
発表者
櫻井 要
会場
オンライン
タイトル
日本における食育の展開と企業の役割 -健康経営に着目して-
要旨
健康経営とは、従業員の健康を企業の資本として考える経営方針である。日本では、2006年「特定非営利団体健康経営研究会」が設立されたのを皮切りに、2016年には経済産業省による「健康経営優良法人認定制度」が開始している。国の制度創設に伴い、多くの都道府県も独自の認定、もしくは表彰制度を設置した。健康経営をテーマにした投稿はそのほとんどが情報誌等へで、学術誌への投稿数は少なく、その内容は導入後の活動内容、効果、影響に集中している。そこで、これまで手薄であった、健康経営を導入する時点に注目し、制度の違いは健康経営導入に影響を与えるのか、健康経営を導入する際の決定要因は何かを明らかにしたい。今後、健康経営がより一層浸透するには、どのような方策が考えられるのかを検討する。

第1回公開コロキウム

日時
2023年6月8日(木)16時30分~18時
発表者
小林 聡
会場
環境学総合館1F レクチャーホール
タイトル
問題解決型住民組織の形成要因 -分譲マンション組合に着目して-
要旨
分譲マンションは、その維持管理を区分所有者で構成する管理組合が担っている。そのため維持管理の質は管理組合の活発さに左右される。さらに高経年マンションでは、管理組合活動そのものに困難をかかえるなかで、建替えか、修繕して住み続けるかという合意困難な選択を迫られる。管理組合に困難な問題が生じたとき、積極的に解決を目指す、あるいは先送りするなど対応が別れる。対応が分かれる要因は何か、その要因はどのようなメカニズムで作用するのかを明らかにしたい。今後地域では自助・共助が求められる。マンションの住民組織である管理組合が、直面する問題を自ら積極的に問題解決できるようになることが重要だと考える。