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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

環境学と私 −人工衛星のデータを使ってみよう−

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宇宙地球環境研究所 附属飛翔体観測推進センター
高橋 暢宏 教授
本教員のプロフィール

人工衛星は環境学にとって重要なツールであると(勝手に)思っています。しかしながら、いざ使うとなると結構ハードルが高いと感じる人が多いのではないでしょうか。自分の経験から言っても、新規に人工衛星データを使おうとすると結構戸惑います。ハードルの第1は、あまり良く分からない名前のプロダクト(データ)が多く、何を使ったら良いか分からなくなること、第2のハードルはデータのフォーマットや時間解像度や空間解像度が複雑なこと、また敢えて第3のハードルを挙げれば、なんとなく衛星ごとに縄張りがあるような印象があることだと思います。これらのハードルの根っこはだいたい同じで、第1に、人工衛星のデータのほとんどは電磁波を用いたリモートセンシングであり、プロダクトの中には電磁波の理論に基づくものが定義されていることも多く、また、様々な波長の電磁波による観測データから(必要とする)物理量を推定するにはある種の物理モデルを介在させる必要があり、物理モデルごとに異なるプロダクトが出されることもあります。第2に必要とするデータのほとんどは静止衛星からではなく周回衛星からのデータであるため、一度に観測できる範囲は限られ、地球全体を同時かつ均一に観測することは難しく、衛星の高度や軌道、走査幅により、データの軌跡、解像度、時間分解能も異なり大体複雑なデータ構成になります。第3に、衛星からのデータ量は、想像以上に大きく、インターネットが発達する以前には、(コンピュータの処理性能の限界もあり)限られた量の衛星データを解析せざるを得ず、研究者は、なんとなく「これは自分の衛星」という感覚に陥っていたわけです。
ここ十数年でこんな状況も大きく変わってきました。インターネットやコンピュータ(とストレージ容量)の進歩によって、研究室にあるパソコンでも十分に様々な衛星のデータを解析できるようになっています。さらに、グリッド化したデータが広く使われるようになり、様々なデータを簡単に組み合わせることも可能になりました。特に、最近ではwebベースで解析・表示ができるようになりつつあり*、整備が進んできている社会データと組み合わせた表示を簡単に行えるサイトも現れてきました。 このように、これまでのハードルは少しずつ低くなってきておりますので、皆さんがご活用されるきっかけになれば幸いです。
*NASAのWorldViewやJAXAのGSMaPやJASMES, Tellusなどをキーワードに検索してみてください。ですが、これらの情報の賞味期限は短いと思ってください。
(たかはし のぶひろ)

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