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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

多様なものの見方で、当たり前を問い直す

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社会環境学専攻社会学講座 2014年博士前期課程修了
近藤 康一郎

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私たちが生活する社会には、どういった問題が横たわり、それはどのような構造を持って現れるのか、学生時代も行政職員として働く現在も、常に問い続けています。
私は、環境学研究科で河川流域におけるコミュニティの変容を研究していました。そもそもコミュニティとは何か、コミュニティはどのような形態を伴って社会の中で機能しているのか、水環境と流域の人々との関係性は具体的に何が変化したのか、といった問いを突き付けられてきました。環境学研究科での学びを通じて、一見自明で、当たり前だと思われていることを立ち止まって考え、様々な視座からその構造を見つめ直すことで、問題の存在を証明したり、新たな事実を発見したりする面白さを知りました。
修了後は、県職員として都市整備に関する法務事務に従事し、ある問題に対して行政組織が判断を下したり、政策を実行したりすることの難しさを理解しました。その後、行政系シンクタンクの研究員として、総合計画や多文化共生プランの策定、子どもの貧困調査に至るまで、政策立案のための調査や計画策定に関する多種多様な業務に携わる機会を得て、現場に赴いて地域が抱える問題をアクチュアルに把握するだけでなく、社会の大きな潮流も踏まえて政策を検討することの重要性を痛感しました。こうした業務では、社会調査への参加により習得した調査設計や定量的・定性的データの分析に関するノウハウが役立つこととなりました。また、得られた調査結果が現状把握や政策の効果測定のみならず、新たな政策の検討・実行の拠り所として用いられたときの喜びはひとしおでした。
現在、私は政令市の企画系の部署で、事業や政策に関するデータ分析や計画の指標管理等に関する業務に携わり、社会の大きな潮流を踏まえた上でデータの変化やそれに伴う問題を分析し、事業の効果検証や新たな方針等の検討を行っています。
学問を究めることを志向した時期もありましたが、今は政策立案・実行の現場に近い場所での仕事にやりがいを感じています。これまで所属した部署はすべて、事務系と技術系の職員が机を並べ、同じ目標に向かい仕事をしていましたが、そうした職場環境を心地よく思えるのは、多様なバックグラウンドの人々が集う環境学研究科で学んだからだと考えています。
仕事を進める中で、前例や自らの担当分野のみに関心が傾いてしまうこともありますが、そうした際には、環境学研究科で得られた、多様なものの見方で「当たり前を問い直す」姿勢を思い出すようにしています。
(こんどう こういちろう)

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