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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

災害環境工学を考える

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減災連携研究センター
平山 修久 准教授
 (専門:衛生工学,災害環境工学,水道工学)
本教員のプロフィール

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2011年東日本大震災,2016年熊本地震,2018年西日本豪雨災害での災害廃棄物量推定
災害環境工学とは何か?災害時の健康リスクや脅威から開放し,復旧・復興において主役となるべき市民の環境衛生面での安全・安心を確保するための都市インフラをデザイン・管理するための技術体系です。すなわち,災害時の水や廃棄物を考えるものです。
私にとっての災害環境工学の出発点は水道工学であり,1995年阪神・淡路大震災です。95年の地震時に神戸市水道局にかかってきた約2400件の市民からの電話,いわゆる市民の声の分析,災害時の応急給水の数値解析モデル構築から,水道分野における災害対策,危機管理に関する研究に取り組みました。現在では,災害時のコミュニケーション,災害対応マネジメント,事業継続から施設や管路の耐震化,人口減少社会に向けた施設更新から災害教訓の継承や人材育成などのテーマに産官学共同で取り組んでいます。
災害廃棄物に関する研究は2004年から取り組んでいます。2004年に神戸にある「人と防災未来センター」の主任研究員で防災の研究に従事していたとき,新潟豪雨,福井豪雨があり,台風18号や台風23号など台風10個が日本を直撃し,新潟県中越地震,さらにはスマトラ沖地震津波災害がありました。災害の現場を目のあたりにし,また,上司である河田惠昭センター長から「君は環境工学だろう。水道だけではなく災害ごみも研究しないといけない」という一言で,災害廃棄物に関する研究に取り組みはじめました。具体的には災害廃棄物量の推計手法の開発や処理マネジメントに関する研究を行っていました。しかしながら,2011年東日本大震災では,高度に発達した現代社会がはじめての津波により被災したこともあり,手探りで災害廃棄物の量の推計を行うことはできたものの,これまでの研究活動がまったく役に立っていないと悔しい思いをしました。環境学研究者が,ひとつの課題として防災をする,あるいは,防災研究者が,ひとつの課題として環境をする,では,災害に立ち向かえないのだと。水道工学は,水道業界をはじめとする社会に役立ってはじめて水道工学といえます。現在,持続可能な社会を目指す環境工学,安全・安心な社会を目指す防災学の視点から,災害時の環境衛生をマネジメントするための実践的な研究教育に取り組んでいます。
(ひらやま ながひさ)

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