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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

セミとり

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都市環境学専攻 建築学系
浅井 竜也 助教
本教員のプロフィール

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小さい頃,夏になると私は毎日セミとりに出かけました。Tシャツに短パン,ビーチサンダルに虫かご,虫とり網という,私の住んでいた町では既にあまり見かけない虫とり少年姿で,毎日家を出ては一目散に走り出しました。公園に到着すると,目はセミの姿を,耳はセミの鳴き声を捉えるべくフル活用させながら,ゆっくりと注意深く木々を観察します。私の家の近くで勢力をふるっていたアブラゼミは,羽は茶色のため木の幹の色と見分けがつきにくいものの,背中に白い模様を有するため,それを目印に探しました(なお,自宅から数kmほど離れた中学校に進学したとき,その周辺にはほとんどクマゼミしかいなかったことには驚きました)。網が届く範囲のセミを見つけたら,まずはセミの背後からゆっくりと近づきます。セミがとまっている木との距離があと数歩まで近づくと,セミは警戒し始めて鳴き声のエンディングに入ります。そこからはさらに慎重に,音を立てないようにしながらセミに網が届くところまで近づき,網をゆっくりとセミの後方やや下側から近づけていきます。セミは明らかに自分が狙われていることに気づき,いつでも飛んで逃げられるようにやや身をかがめます。その警戒心を感じながら,ここならばセミを確実に捕らえられるというところまで網を近づけていきます。それまでにセミが逃げなければ,勝ちはもう私のものです。思い切って木に向けて網を振り,木にあったらすぐに地面にたたきつけ,逃げられないようにします。セミは頑張って羽を動かしても逃げることのできない網の中にいるので,そこからセミを傷つけないようにゆっくりと取り出し,虫かごに収めます。ただし,時に警戒心が強いセミに対しては,私はおしっこをかけられながら,網を振りかざしたまま宙を見上げ続けることになります。虫かごをいっぱいにしたら家に帰ります。捕まえた蝉とは1日だけ家で共に過ごし,翌朝,一匹ずつ虫かごから羽ばたかせて,遠くまで無事に飛んで行くのを見届けたら,また新たなセミとりに出かけます。このようなことが,私にとって初めての環境学であったように思います。
(あさい たつや)

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