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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

生活空間の温熱・気流環境をシミュレーションする

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都市環境学専攻 建築学系
玄 英麗 助教
 (建築・環境デザイン)
本教員のプロフィール

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様々なスケールの生活空間:室内環境、
屋外環境、および都市環境
私たちは、室内環境、屋外環境、都市環境といったスケールの異なる様々な空間で生活しています(図を参照)。私の主な研究は、環境シミュレーション技術を用いて、これらの空間それぞれに存在する温熱・気流環境問題を把握し、より健康で快適な温熱・気流環境を提供するための対策を検討することです。
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、国連気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書(2014年)によると、世界平均気温は、1880~2012年の間に0.85℃(0.64℃/100年)上昇しており、現在から今世紀末までに最大で4.8℃更に上昇すると報告されています。このような地球温暖化の影響に加え、都市部では、都市化に伴って気温がその周辺よりも高くなるヒートアイランド現象(都市温暖化)が起きています。近年、このような2種類の温暖化による気温上昇は深刻な問題になっており、人々の健康や安全を脅かす被害(熱中症や睡眠障害など)の増加が懸念されています。
私たちの生活空間で起きている温熱・気流環境問題を解決・緩和するため、様々な対策が導入されています。これらの対策の効果は実測に基づいて評価することが可能ですが、この場合、評価可能な範囲に限りがある、周囲の環境変化を反映した評価が困難であるなどの限界があります。ここで有効なのがコンピュータによる数値シミュレーションの活用です。数値シミュレーションとは、実在現象を数値モデルを基にコンピュータ上で再現する模擬実験です。
私は、室内環境から屋外環境、そして都市環境に至る幅広い空間スケールを生活空間としてとらえ、それぞれの環境で温熱・気流環境をコンピュータ上で再現することにより熱的快適性や暑さ指数の評価を行います。さらに、その評価を基に適切な温熱・気流環境対策を導き、その導入効果も数値シミュレーションにより定量的に評価します。数値シミュレーションを使用することで様々な対策の効果を比較的安いコストで評価することができ、その結果に基づいて実際問題に対する有効な対策の立案も可能になります。このように、数値シミュレーションは、実際の温熱環境計画の策定に大きく寄与し得るもで、特に、近年の計算科学技術の飛躍的な発展の背景もあり、環境問題の解決策・緩和策の検討に幅広く応用されることが期待できます。
(げん えいれい)

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