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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生ががそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

水から気候変動に迫る

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地球環境科学専攻 気候科学講座
植村 立 准教授
(専門:古気候学、同位体地球化学)
本教員のプロフィール

私の主な研究は、気候変動の歴史の解明です。数百年前から数十万年くらいをターゲットにしています。数百年はイメージしやすいと思いますが、数十万年前というと、映画やアニメで出てくるいわゆる氷河期というとわかりやすいでしょうか。あまり知られていませんが、現在より暖かい時代も約十万年ごとに繰り返し訪れていました。このような過去の気候変動の実態やメカニズムを解明することは、将来の環境変動の予測の高精度化にもつながります。
そこで、私は「水」の酸素や水素の同位体比を分析することで、過去の気候変動を明らかにすることを目指しています。同位体比というのは重さの違う元素のことで、その変動から過去の降水量や気温の変動を推定することができます。水は我々のもっとも身近にある物質だと思いますが、昔の水なんて普段は考えたことも無いかもしれません。有名な例では、南極には数十万年にわたって降り積もった雪が氷になって残されています。南極の氷を掘削したアイスコアの同位体比の研究では、過去72万年間の南極の気温変動を復元して、大気の二酸化炭素濃度の変動パターンとの不一致が日射量に起因することを明らかにしました(Uemura et al., Nature Com., 2018)。
意外なことに、温暖な地域でも、古い降水が保存されていることがあります。最近は、この鍾乳石の中の「水」をターゲットにした研究をしています。鍾乳石というのは、洞窟内で成長している石灰岩(つらら石が有名)のことですが、石の構造の小さい隙間に、ごくわずかな液体の水が保存されていることがあるのです。この水は、過去の降水そのものなので、例えるなら、化石ではなくて冷凍マンモスのような状態です。原料(水)と生成物(石)が両方の同位体比を分析できるので、鍾乳石ができたときの温度が計算できます。「寒い」ではなくて、「何度」気温が低かったのか?を知ることができる点でとてもユニークです。
このような研究は、分析技術の急速な発展に伴って可能になってきました(十数年前には、不可能に近いと思っていました)。私の研究はいわゆる実験系ですので、室内で実験をすることが中心です。鍾乳石の分析装置なんてものは、探しても売っていませんので、自作します。配管を組み立てたり、様々な業者と相談して部品を製作してもらったり、上で書いている壮大な話とはなかなかリンクしない作業です。一方で、そういう装置を使って、環境変動の歴史のデータを自分の手で得られるのは、単純にうれしいものでもあります。
(うえむら りゅう)

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