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天津大学建築学院と合同建築・都市設計ワークショップを開催

大学院環境学研究科都市環境学専攻建築学コースでは、2025年4月21日(月)から25日(金)までの5日間、名古屋大学東山キャンパス環境総合館1階レクチャーホールを会場として、中国の天津大学建築学院(T-Arch)と建築・都市設計ワークショップ(以下、WS)を開催しました。今回はT-Archから建築、都市計画、ランドスケープを専攻する4名の大学院生と11名の学部生、名古屋大学建築学コースの大学院生10名(うち4名はNUPACE生)の計25名が参加しました。WSの指導はT-Archの鄭穎副教授、張蕾副教授、本学の小松尚教授と李燕講師(工学研究科)、斉藤孝治助教、項一朗助教、そして4名のティーチング・アシスタント(修士2年)が行いました。本WSは,2015年度に天津⼤学と締結した学術交流協定に基づいて,本学の建築学コースと天津⼤学の修⼠課程相当の学⽣を対象に、英語を共通⾔語にして⼀つの建築・都市デザインを提案する機会として開催しています。2019年度までは毎年4⽉に名古屋で、9⽉にパリに赴き、実際に現地⾒学を⾏いながらWSを実施してきましたが、2020年度からは新型コロナウイルス感染症の世界的流⾏により、2021年度と2022はオンライン形式で開催しました。(2009年度から2021年度はフランスのパリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国⽴⾼等建築学校(ENSA-PVS)と共同で開催。天津⼤学は2015年から参画。)例年、4月に名古屋で、9月にパリでWSを実施しており、今回は通算26回目のWSとなります。コロナ禍の2020年度から2022年度までは対面でのWSは開催ができず、2021年と2022年度はオンラインで開催しました。2023年度と2024年度は、天津大学は中国の国内事情のため、参加を見送りましたので、今回は3年ぶりに天津大学と共同で開催、5年ぶりに天津大学と対面で開催しました。また、今回、ENSA-PVSは大学の事情により残念ながら不参加でした。

今回のテーマは、「Regeneration of Closed School Site as Sociocultural Hub in Nagoya’s City Center」。名古屋・伏見の旧御園小学校跡地とその南の小公園を社会文化的な交流拠点として一体的に再整備するという課題です。

名古屋市立御園小学校は、1954年に名古屋市立名城小学校分校として開校し、1961年に名古屋市立御園小学校として独立しました。しかし、児童数減少により、2023年3月31日に閉校しました。

旧御園小学校の跡地は、オフィスビルや高層ホテルが多く立地する伏見エリアに位置しています。旧御園小学校の校舎は、鉄筋コンクリート造の3階建(一部2階建)の建物で、敷地の北側と東側に沿ってL字型に配置されています。小学校敷地の南側には道路を挟んで公園があり、公園内には公衆トイレ、池、喫煙場が設けられています。この小さな公園は、名古屋・伏見エリアで唯一の緑地となっており、都市において自然とふれあう貴重な空間となっています。今回の課題では、小学校と小公園を一体的につなぎ、小学校校舎の公共施設としての歴史的価値を保存しつつ、周辺住民や利用者が楽しく交流できる新たな社会文化的な公共空間へと再編する提案を求めました。

WSは初日の午前に導入の講義を行った後、日中およびNUPACE学生による混成グループ(1グループ6〜7名)に分かれて、旧御園小学校跡地、校舎とその南の小公園の現地調査を行い、現状分析と提案に向けての議論を開始しました。2日目の午前には、豊田講堂(槇文彦氏設計)見学を行い、豊田講堂から本学内に新設されたComoNe、中央図書館、さらに名古屋の都心を結ぶグリーンベルトを体感しながら、建物の機能やデザインについて議論を交わしました。

3日目の午前中にComoNeの見学をおこない、文化的な交流空間であると同時に、変化する地形に対応する建築の実例として、学生たちに体感してもらいました。そして、夕方には中間発表会を行い、分析結果の妥当性やデザイン提案の方向性を確認しました。また中間発表会の後は、張蕾副教授によるランドスケープデザインに関する講義をしていただきました。4日目からは提案を伝達・表現する図面や模型制作に集中し、5日目の夕方には成果発表会を行いました。成果発表会では、各グループの分析結果とデザイン提案がA1版4枚の図面と模型を用いて発表しました。発表には、担当教員だけでなく、建築の教員や博士後期課程の学生、名古屋市教育委員会の職員も出席して、4グループからの提案に対して、面白さや合理性、今後の課題などについて意見交換しました。5日間という短い時間でしたが、いずれの提案も、旧御園小学校跡地とその南の小公園の再整備事業に対して、都市・ランドスケープ・建築・人間それぞれのスケールでの空間デザインにおいて、創造的な参考となる提案を提示することができました。

なお、本WSの実施にあたっては、豊田講堂関係者にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。 また、本WSは環境学研究科長裁量経費の支援を得て実施されました。

《参考》今回および過去のWSの様子や成果については、下記ウェブサイトで紹介しています。
https://www.nuac.nagoya-u.ac.jp/unique/index.html

参加者集合写真