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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

「第3ラウンド」に向けての「タマ込め」

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社会環境学専攻 環境政策論講座
竹内 恒夫 教授
 (環境政策論)
本教員のプロフィール

1980年代末から、資源・エネルギーの大量消費に起因する地球温暖化問題、資源・廃棄物問題、生物資源の荒廃問題などが国際社会の課題になりました。この国では、ISO14001などがブームになり、また、市民・事業者などとの「参加・協働」によるリサイクル、省エネ、家電製品の買換などの取組が進められ、近年ではエコカー、太陽光発電などをエンジンとする「グリーン成長」が目指されました。
1960年代・70年代の公害問題の時代を環境取組みの「第1ラウンド」とすると、1980年代末以降は「第2ラウンド」であるといえます。
しかし、この国では、こうした取組みが「国民運動」として進められても、また、ゼロ成長が定着し、人口減少が本格化しても、CO2排出量はいまだに減少基調になってはいません。また、天然資源(金属系、バイオマス系、化石系、土石系)の消費量は1990年をピークとして、それ以降は減ってきていますが、実際に減っているのは公共事業の減少に伴う土石系だけです。
いくつかの環境取組みの推移をみてみます。
1990年代に始まったISO14001の認証登録の事業者数、「環境活動」を事業とするNPO法人の認定数、「エコプロダクツ展」の来場者数、Eco検定の受験者数などの仕組みの件数などの推移をみると、これらは2008年~2010年頃をピークにして、減少しているのです。
また、人々の「環境の取組みへの意向」を1990年代はじめ、2000年代はじめ、2015年で比較してみますと、「暮らしの中で工夫したい」は少しずつ減少し、「市民活動に積極的に参加したい」は3分の1程度に減少し、反対に「特にしたいことはない」が4倍増になっています。
一方、目指された「グリーン成長」はいまや「大失速」状態です。「グリーン成長」の「エンジン」である環境産業の市場規模はエコカーなどを除き、既にピークは過ぎています。また、環境機器などが「供給過剰」と捉える向きが多くなっています。
このように、この国では、CO2排出量などの改善の兆しすら見えないうちに、環境取組みの「第2ラウンド」は終了してしまったのです。
いま、「第3ラウンド」に向けた「タマ込め」をしなくてはなりません。
(たけうち つねお)

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