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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

粒子がつなぐ環境学

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地球環境科学専攻 地球惑星物理学講座
城野 信一 准教授
本教員のプロフィール

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正直に言いますと、私はこれまで「環境学」に関連すると自信を持って言えるような研究は行ってきませんでした。私は惑星形成論と呼ばれる分野の研究を行っています。太陽の周囲に漂うミクロンサイズの微粒子が相互に付着成長することで惑星の形成が始まります。太陽から離れた領域では温度が低いために主成分は氷となります。氷は揮発性が高いので蒸発したり凝縮したりを繰り返します。すると氷の粒子は形を変えていきます。形が変わると、微粒子のくっつきやすさが大きく変化するために、惑星の形成に大きな影響を与えそうなことがわかりました。この理論からは、粒子がくっつく領域とくっつかない領域が太陽の周りを同心円状に取り囲むことが予想されます。この予想によく似たシマシマが、チリに建設されたアルマ電波望遠鏡によって近年観測されました。地球を含む惑星の形成過程は、われわれの環境を含むと言えるかもしれませんがかなり無理があります。ましてや星のまわりのシマシマが「環境学」とは私にはとても言えません.
ところで火星の表面には「ブルーベリー」とよばれるmmサイズの粒子が多数発見されています。一方、これによく似た「モキマーブル」という粒子がアメリカの砂漠で見つかっています。モキマーブルの成因を明らかにするためのプロジェクトに縁あって参加しています。モキマーブルの成因がわかれば、砂漠の古環境、さらには火星の古環境に迫れるかもしれません。これなら自信を持って環境学を名乗ることができます。場所が宇宙空間から砂漠の砂の中へと大きく変わりますが、鍵となる物理プロセスには驚くほど共通点があります。このプロジェクトは環境学研究科の中の幅広い所属にまたがっています。名古屋大学博物館、宇宙地球環境研究所、都市環境学専攻、私は地球環境科学専攻。学外から名古屋市科学館の研究者も加わっています。これまでもっぱら数値シミュレーションをしていた自分が砂漠の中でサンプルを採取するとは..これまでの専門を活かし横につながることができる、環境学の醍醐味が最近ようやくわかってきました。
(しろの しんいち)

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