環境学と私

このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

海とともに歩む

都市環境学専攻 都市持続発展論講座
中村 友昭 教授
本教員のプロフィール


私は海の近くで生まれ育ち,海釣り,潮干狩り,海水浴など,海はいつも近くにありました.台風のときには,家の前の川があふれることもありました(いま思えば高潮だったと思います).小さい頃から海の恵みと恐ろしさを肌で感じていたのだと思います.

高校卒業後,名古屋大学工学部社会環境工学科(現環境土木・建築学科)に入学し,海から離れたキャンパスでの生活が続き海のことを忘れていました.専門の講義が本格的に始まる学部3年生になって,海岸工学という分野が土木の中にあることを認識し,海のことを思い出しました.研究室を決めるときに偶然にもじゃんけんで勝って海岸研究室に配属になり,海岸工学の道に進むことになりました.

研究室に配属になって最初の研究テーマは,護岸からの埋立土砂の吸い出しでした.兵庫県大蔵海岸において,陥没した穴に子供が生き埋めになる痛ましい事故があった直後でした.このときに作り始めた数値計算モデルが,3次元流体・構造・地形変化・地盤連成数値計算モデルFS3Mの開発につながっています.

その後,2004年スマトラ島沖地震時や2011年東北地方太平洋沖地震時に津波による甚大な被害が発生したことを受けて,研究テーマが津波にシフトしました.現在は,底質を巻き上げて濁水状態となったいわゆる「黒い津波」の研究を行っています.このような津波による研究は,防災・減災という工学的な側面だけではなく,沿岸環境が津波によってどのように変化するのかという環境学的な問いにもつながってくると考えています.

津波以外では,礫浜海岸の海浜変形の研究,サンゴ礁の波浪減衰効果に関する研究,振り子型波力発電装置に関する研究を進めています.礫浜海岸の研究では,三重県七里御浜に設置したネットワークカメラによる定点観測を15年以上続けており,礫浜海岸という環境が長い時間スケールの中でどのように変化していくのかを観察し続けています.

その一方で,気候変動に伴う海面上昇が徐々に進行しており,海岸・港湾構造物の安定性の低下や海岸侵食の進行が懸念されます.今後も,津波の防災・減災対策を中心として,持続可能な沿岸域の実現や環境負荷の低減の実現に向けた研究を,海の近くで生まれ育った恩返しとして進めていきたいと思っています.

(なかむら ともあき)