環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。
都市廃墟再考

都市環境学専攻 建築学コース 博士後期課程 2024年度修了
都市環境学専攻 建築学系
項 一朗 助教
本教員のプロフィール
私は、いつも都市に残る薄暗い廃墟についてもっと知りたいと思っていました。この好奇心こそが、私の研究の始まりだったのだと思います。
きれいな都市公園を設計することを夢見ていた学生時代、大連駅からバス停へ向かう途中には、必ず不気味な街区を通っていました。そこには空き家となった立派な古い建物があり、その内部の様子が気になって、何度も窓から中を覗いていました。この出会いは、私の博士研究の原点となった大連連鎖商店との出会いでした。
大学院では、1900年頃に建設された老朽化した都市住宅を実測する機会に恵まれました。100年前に掲載された建築図面を入手し、都心部にある廃墟に入り、建物に残る痕跡を調査し、現在までの変容を記録しました。図面とは異なって細かく区切られた小部屋、新たに設けられた中二階、住民が残した家具、タイルが貼られた壁面などから各室の用途を推測することは、とても楽しい経験でした。その時、私はようやく、自分は廃墟が好きなのだと実感しました。
振り返ってみると、大連連鎖商店と呼ばれていたその廃墟は、かつてどのような姿だったのだろうか。その思いから歴史資料を調べ、竣工当時の姿を復元し、大連連鎖街の建築史的意義を再考する研究に取り組んできました。薄暗い空間の中に残された過去の人々の暮らしや設計者の考え方、町としての美しさを図面と廃墟の両方から読み解き、その価値を評価し、多くの人々に歴史や建築の魅力を伝えることを目指しています。
一方、歴史資料に掲載された図面をもとに現地調査を行い、建物の現状を確認するとともに、増改築の痕跡から100年間の変遷を読み解くことを試みています。その過程を通して建築家の設計を改めて評価し、客観的な事実を尊重しながら建築史的な価値を位置づけ、将来にわたる保存につなげることに努力しています。
私たちの都市では、新しい建物が次々と建設される一方で、多くの廃墟が姿を消しつつあります。しかし、私は「美しさ」には多様な意味があると考えています。古典様式の建築、インターナショナル様式の建築、そして雑草に覆われながら静かに時を刻む都市の廃墟もまた、それぞれ固有の歴史と美しさを備えた存在です。私の研究は、このような異なる文化の受容によって形成された都市の歴史的な街並みや建築の記憶を掘り起こし、都市廃墟を再考することを通して、多様性を有する街並みの保存と再生を目指しています。
(こう いーらん)