環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。
台湾国立成功大学と環境学研究科の学術交流

地球環境科学専攻 気候科学講座
河合 慶 特任助教
本教員のプロフィール
黄砂は毎年のように日本へ飛んでくるため、多くの人にとっては「また来たか」という存在かもしれません。私自身も、研究者になる前はニュースで見聞きする程度の身近な現象だと思っていました。しかし研究を始めてみると、見慣れたはずの黄砂にも、知らないことや解き明かされていないことがたくさんあることに気づきました。昔から多くの研究者が黄砂を追いかけてきましたが、最近では雲の氷の核になることでも注目されており、「古くて新しい研究テーマ」だと感じています。
黄砂の主要な発生源は東アジア内陸部のゴビ砂漠とタクラマカン砂漠です。私はこれまで、現地協力者とともにゴビ砂漠に観測装置を設置し、どのような条件で砂が舞い上がり、どのように遠方まで輸送されるのか、発生・輸送メカニズムの解明に取り組んできました。観測装置が砂に埋もれないか、強風で倒されないかといった心配をしながらも、それでも動き続ける頼もしさに助けられながら、現地と日本を行き来する日々でした。
一方で、現地観測だけでは捉えきれない広域の現象を理解するために、全球気候モデルの改良にも力を注いできました。黄砂がいつ・どこで・どれほど発生するかという計算方法を見直し、実際の観測により近いシミュレーションができるよう、試行錯誤を重ねてきました。観測とモデルという異なる視点を行き来しながら、少しずつ全体像がつながっていく過程に、研究者としてこの分野ならではの面白さを感じています。
また、ゴビ砂漠では黄砂が舞い上がると、ダストストーム(砂塵嵐)として人や家畜に被害をもたらすことがあります。研究対象として興味深い現象であると同時に、現地の人々にとっては深刻な災害にもなりうる。こうした背景を知ることで、黄砂という現象をより多面的に捉えられるようになりました。
過去にも日本や中国、韓国の人々が同じ空を見上げて、この砂の到来を感じてきたことでしょう。これからもきっと飛び続ける黄砂と、ゆるく付き合いながら研究を続けていけたらと思います。
(カワイ ケイ)