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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

世界に貢献する国際協力を目指して

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地球環境科学専攻 地球惑星物理学講座
熊谷 博之 教授
本教員のプロフィール

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エクアドルのトゥングラワ火山
これまで私は、アジアや南米諸国における地震・火山の活動監視や災害軽減に関する国際協力プロジェクトに数多く関わってきました。このような仕事に関わるきっかけは、前任地の防災科学技術研究所で2001年にエクアドルからの研修生の指導員となったことでした。
それまでの自分にとっての海外はアメリカで、最先端の研究をして論文成果を上げる場所でした。国際協力とは一昔前の技術を移転する「お仕事」で、自分の研究にはメリットはないと考えていました。そんな思いの中で始めた研修だったのですが、いきなりその考えは間違っていることに気づかされました。私がアメリカ留学中に研究していたのは火山で起こる低周波地震の発生メカニズムだったのですが、その研修員はこれまで私が見たことのなかった低周波地震の記録を見せてくれたのです。その記録はエクアドルのトゥングラワ火山で観測されたものでした。
その後、私はエクアドルでの火山監視強化に関する国際協力機構(JICA)のプロジェクトに深く関わっていくことになりました。そこでは、出来上がった技術だけを移転するのではなく、先端的な技術にも挑戦して、相手国の技術向上にも世界の基礎研究にも貢献するプロジェクトを目指しました。その結果、2006年のトゥングラワ火山の噴火においては、プロジェクトで設置した地震計の記録に基づいて火砕流が発生する前に住民を避難させ、人的被害を最小限に抑えることができました。また取得された観測データからは多くの研究成果が得られました。アメリカやイギリスの研究者が、私たちが設置した機材のデータを用いて国際学会で発表しているのを今でも目にします。
エクアドルの他にも、インドネシアやフィリピンなどと国際協力を行ってきました。さらに2015年からはコロンビアとのプロジェクトを進めています。これは地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)により、名古屋大学が中心となって、コロンビアにおける地震・津波・火山噴火による災害軽減技術の開発を行うものです。相手国にも世界にも貢献する成果が得られるように奮闘中です
(くまがい ひろゆき)

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