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このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

4Dプロジェクト

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地球環境科学専攻 地球環境変動論講座
篠田 雅人 教授
本教員のプロフィール

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モンゴル、ゴビ砂漠。ランドローバーは西からの強風にあおわれながらオアシスに向かっていた。大地が低く野太いうなり声をあげはじめる。そそり立つ黒褐色の壁がみるみる迫ってきたと思うと、視界のほとんどきかない地底のような世界にひき込まれ、車中で一同しばし息を潜めた。写真は、わたしたち黄砂研究チームが砂塵嵐に巻き込まれたすぐ近くで、難渋する遊牧ラクダの群れだ(写真撮影:大谷眞二)。
この規模の嵐はそれほど珍しいものでない。2008年5月末にモンゴル東部を襲った砂塵嵐は、モンゴル観測史上最大規模の被害(52人死亡、約28万頭の家畜死)をもたらした。最大瞬間風速が毎秒40メートルを超える嵐は砂塵と雪をともなっていた。気象学・医学・獣医学・文化人類学の専門家による合同調査で、同程度の強風の地域でも被害状況が大きく異なることに気づいた。被害が大きかった地域には、嵐の規模の大きさのみならず、それに備える遊牧社会に問題があったことがわかった。
モンゴルを含むユーラシア乾燥地には砂塵嵐を含め、そこに特有な4種類の自然災害がある。それらは、砂塵嵐(Dust storm)、干ばつ(Drought)、砂漠化(Desertification)、ゾド(Dzud)とよばれる寒雪害で、英訳語の頭文字をとってこれらを4D災害とよんでいる。4D災害をひとつのリスク評価の枠組みでとらえることを目的とした研究課題「乾燥地災害学の体系化」(科研費基盤研究(S))、通称4Dプロジェクトが始まった。これはモンゴル人研究者とともに10年来取り組んできた研究の集大成だ。災害前の対応のために4D災害リスクマップを作成し、遊牧社会の将来に役立てるためいろいろ方策を考えている。

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