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このコーナーでは、環境学研究科の教員や修了生ががそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

大気エアロゾルから地球の気候変動を考える

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地球環境科学専攻 地球環境変動論講座
松井 仁志 助教
本教員のプロフィール

私は地球大気に存在するエアロゾルと呼ばれる微粒子について研究しています。数年前に話題になったPM2.5や、アジア大陸から運ばれてくる黄砂、光化学スモッグというと身近に感じていただけるでしょうか。これらのエアロゾルが健康に害を及ぼすということは多くの方に知られていますが、気候変動というより大きな時空間スケールでも鍵になる物質であるということはあまり知られていません。大気中のエアロゾルは、それ自体が太陽光を遮ることで、また、雲粒のもととなり雲の性質や雨の降り方を変えることで、地球を冷やす役割を持つと考えられています。また、栄養塩(鉄・リンなど)の供給源となり、海洋や陸上の生態系を変化させ、地球全体の炭素循環にも影響を及ぼすと考えられています。
このようなエアロゾルの影響は、今世紀の地球の気候の将来を予測していく上で最も大きな不確定要因の1つと考えられています(IPCC報告書など)。これは、将来予測のために使われる気候モデルにおいて、上で述べたエアロゾルの影響の表現方法の不確定性が大きいためです。エアロゾルの大きさ・組成・形状は様々なため、その多様性を観測から正しく理解し、数値モデルで表現することは、温室効果ガスなどの気体成分の研究とは違った難しさがあります。しかし、多くの気候モデルによる計算では、コンピューターが扱える計算量に限りがあり、エアロゾルばかりに重点は置けないため、エアロゾルはその多様性にもかかわらずかなり簡単に表現されます。私の研究では、これとは対極的な視点から、エアロゾルの多様性をなるべく細かく表現し、それぞれの粒子が異なる気候影響を持つことを計算し、それによって初めて見えてくるエアロゾルの気候影響の重要性を調べてきました。今後も新たな観測データや新しい計算手法を用いることで、エアロゾルが過去から将来にかけての地球の気候変動においてどのような役割を果たしているのかより深く理解していくことを目指しています。
エアロゾルの気候影響に関する研究は、「複雑でよくわかっていないが地球の環境や気候を考えると重要そうだ」という特徴を持っています。研究上は多くの困難にも遭遇しますが、知的好奇心を刺激し満たしてくれる良い課題です。エアロゾルから見えてくる地球の気候変動の様々な側面について、少しでも多くのことを学び、見つけ、伝えていけたら良いなと思っています。
(まつい ひとし)

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