環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境学に取り組んで ―

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都市環境学専攻
谷口 元 教授
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中部国際空港西全景
 
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空港の出来上がりを最終チェックする参加者たち
自身は建築計画学の教育研究と、実際の病院計画や本学のキャンパスマスタープランや施設整備に関与して来ました。環境学研究科の発足以来「環境デザイン論」という大学院の講義を長らく担当させていただいたお陰で、従来の「建築計画」という分野では到達し得なかった視野を得ることができ、それを大学院教育に反映できたのではないかと思っているところです。西欧発のEnvironmentは、主体としての人間が中心にあり、人間存在を取り囲む諸物が客体としての環境であると。ところが例えば食品学の分野では、人間の口から肛門に至る消化器官も人体からは外的環境であるという見解もあり、まるでアシモフの宇宙理論のようだと、「環境」という言葉の解釈の多様性に悩まされてきました。ところでずいぶん昔に流布したAffordanceという概念は、人間を主体としその他を客体としての環境と捉えるのではなく、その場にあるすべての相関関係で環境が形成されているという、主体も客体も一緒くたに捉える考え方で、その後の私の考え方に変更を迫るものでした。
た「我思う、故に我あり」とか「人間は考える葦である」という人間存在の古典的哲学、今日的には「脳で考える」人間の在り方ではなく、普通にそこで生きている人としての存在を認める生き方こそが、重要であると考え始めました。
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年ほど前になりますが、縁あって中部国際空港や愛地球博のユニバーサルデザインの取り組みに参加する機会を得ました。多くの障害者と共に、より望ましい空港や施設、交通機関や街のデザインがどうあるべきかを議論してきましたが、究極的にはすべての立場の人々、すべての存在が認められるようなNormalization の世界の実現が肝要ではないかと、停年を前にした唯乃教授の白昼夢でした。
(たにぐち げん)