環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 環境としての人間関係

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社会環境学専攻 心理学講座
伊藤 義美 教授
の専門は、臨床心理学やカウンセリング心理学です。立場としては、パーソンセンタード・アプローチ(Person-Centered Approach、PCA)の考え方に魅かれています。現在は、個人アプローチとしてフォーカシング(Focusing)、グループ・アプローチとしてエンカウンターグループ(Encounter Group)の実践と研究に主に取り組んでいます。フォーカシングはサイコセラピーの方法でもありますが、それ以上に人の態度と関係性が重視されます。エンカウンターグループ(出会いグループ)は、個人の成長、対人的コミュニケーション及び対人関係の発展と改善を目指しますが、グループ参加者の態度やグループの雰囲気・風土が重視されています。フォーカシングもエンカウンターグループも専門的な知識や技法よりも、人の態度・在り方こそが問題にされるのです。
ーソンセンタード・アプローチ(PCA)は、次の二つの基本的仮説に基づいています。
(1)人がもっている実現傾向(有機体を維持し強化する方向に全能力を発展させようとする、有機体に内在する傾向)を信頼する。
(2)この実現傾向は、特徴的な人間関係(3つの態度条件)によって解放される。
(2)
の3つの態度条件とは、①真実性や透明性、②無条件の肯定的関心、③共感的理解です。人は生成過程に在り、本質的に創造的、社会的、成長志向的な存在だとみなされます。家庭、学校、職場、地域など環境としての人間関係が劣悪だと人の実現傾向の発現が抑えられ、歪められます。そして心の不健康や人格的社会的な不適応を生み出します。しかしカウンセリングやエンカウンターグループにおいて3つの態度条件を経験すれば本来の実現傾向が発現し、人は心の健康や人格的社会的適応に向かいます。私は、3つの態度条件を備えた環境としての人間関係を家庭、学校、職場、地域にどのように構築していくかを微力ながらも追求しています。
(いとう よしみ)
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