環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 木造都市のプロローグ

顔写真
都市環境学専攻建築学系
(工学部施設整備推進室)
太幡 英亮 助教
(建築計画)
写真
 
古屋大学に赴任して3年が経ちました。この間、専門とする建築計画学の研究活動とともに、工学部施設整備推進室に所属して多くの設計活動にも関わらせて頂きました。3年前の4月に設計を開始したES総合館は都市環境学専攻の建築学系が入居する建物です。名古屋大学の北東エリアの入り口に位置するため、「ゲート」としての役割を担う空間計画を意図しています。また、6-7階に入居する素粒子物理学の研究スペースは、廊下で出会い、そのまま議論をし、その場で壁に数式を書き込むといった流れが自然と生み出されることを目指して設計されています。
のES総合館の駐輪場は、スギの間伐材丸太でできています。当初設計ではアルミの既製品が予定されていたのですが、環境学研究科をはじめとした多くの先生方のご助言もあり、木造に変更したものです。しかし、こうした公共的な建築物に「木」が使われることは極めて稀な事でした。と言っても百数十年前までは日本には殆ど木造建築しか無かったことを考えると、「稀」になったのは近年の事と言えるでしょう。
術や法制度の後押しもあって、新しい木造建築への取組も増えてきていますが、名古屋大学でも特に、地域の林業の活性化に向けた木材活用の建築に率先して取り組んでいます。先日、キャンパス内の「車止め」のために、間伐材ポールを開発しました。車止めは、一方から見ると車の進入禁止のためにありますが、別の視点で見ると歩行者のための存在です。木製の家具が人を惹きつけるように、人のための車止めには木が相応しいだろうという発想です。また、この間伐材ポールは生物材としての木の特徴を受け入れ、ステンレスの蓋を残した本体の「更新」を前提としています。森林の再生もまた木の更新を前提とする以上、「朽ち易い」の一言は木造をあきらめる理由にはならないでしょう。
林のサイクル、建築に対する人びとの関わりかた(産業・技術・コミュニティのサイクル)、地域の建築のサイクルが一つに重なるなかで、梅雨に香り立つ木造都市が再び現れる事を楽しみにしています。
(たばた えいすけ)
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