環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

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社会環境学専攻 社会学講座
丸山 康司 准教授
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「市民風車わんず」お誕生セレモニー
が環境学に取り組もうと思ったきっかけは、ある種の胡散臭さを感じたことです。1980年代後半から環境問題という言葉の露出が多くなり、「地球に優しい」といったキャッチフレーズを目にする機会が増えました。その大半は環境への負荷を減らすだけの内容で、実際には「厳しくない」と表現すべきものではないかという違和感を抱いていました。また危機感を煽るような物言いには反発すら感じる時がありました。こうしたことから単なる危機管理ではなく、持続的な取り組みとして環境問題を解決することが可能になるような社会の仕組みを研究しています。仕組みと言っても、法律や制度のような堅いものだけではなく、地域おこしやNPOといった取り組みも含めて考えています。
般論としての環境保全の重要性に異議を唱える人は少ないでしょう。けれども具体的にどのような環境をどのように保全するのかを考え始めると、すっきりとした答えが見つかることは滅多にありません。生物の多様性を保全しようとしても、生物は私たちにとって良いことずくめとは限りません。災いの部分を受け止たり受け流す智恵が必要になります。あるいは風力などの再生可能エネルギーを導入しようとしても様々な課題が存在し、反対運動などが起こることもあります。そこで気候変動などの建前を強調しすぎると、環境保全は抑圧の論理へと容易に転化します。ここでも再生可能エネルギーの導入が地域の人々にとっての利益になるような工夫が必要になります。その一例として、市民風車というタイプの事業形態などに注目し、地域密着型の取り組みについての研究を進めています。
境問題は特殊な社会問題で、「悪人」を特定することが難しく、原因を作っているという意味でも、その影響を受けるという意味でも「私たち」の問題かもしれません。ただし、こうした見方は社会全体を俯瞰した場合のもので、個別には様々な利害が存在します。問題は長期的かつグローバルな性質を帯びていますが、それを身近な利益に結びつけることによって、「結果的に環境問題を解決する」ような社会を実現できるのではないかと考えています。
(まるやま やすし)
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