環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 火山観測の現場の環境

顔写真
地球環境科学専攻 地球惑星ダイナミクス講座
中道 治久 助教
(固体地球物理学)
写真
鹿児島県トカラ列島 諏訪之瀬島
は地震観測で火山研究をしています.噴火している火山の火口近くで観測するにあたって問題となるのは,まさにその場所の環境です.はっきり言えば劣悪な環境下で観測は行われます.劣悪な原因はいくつかあるのですが,主なものは火山灰と火山ガスです.火山ガスは,マグマが上昇して来て発泡という現象を経て出てきます.ちょうど,ビール瓶の栓を抜く前が,噴火前で,抜いたら噴火している状態にあたります.(ビールから出るのは炭酸ガスですね.実はマグマからも炭酸ガスが出ます.)火山ガスの成分の一番多いのが,炭酸ガス,あと二酸化硫黄・硫化水素(温泉に行って臭うあれです)などです.これらの有毒ガスは大気よりも重いため,谷筋などに沿って流れ下り,山麓に被害をもたらすこともあります.
は大学院までは実は噴火を間近で体験することはありませんでした.最初はポスドクになった2001年の三宅島でした.そのころの三宅島では,島内に火山ガスが充満したために,寝泊まりするためにクリーンルーム(通称:逆ガス室)でないと命の危険にさらされました.2000年からの三宅島噴火で,大量の二酸化硫黄の放出が数年以上にわたって継続し,全島避難した住民が帰島できるまでに4年5ヶ月を要しました.その後も二酸化硫黄の放出が続いているため,三宅島内ではガスマスクの常時携帯が現在も義務づけられています.
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08年からは,鹿児島県のトカラ列島にある火山島の諏訪之瀬島での火山観測をしています.ここは噴火が絶えず続いている火山で,島の人口は60名ほどです.2008年7月は皆既日食騒ぎで一瞬だけ沢山の人がいました.特別な許可を得て火口そばにまで近づくことが出来きます(写真).この観測では,常に火山灰に悩まされます.噴煙上がり風向きが悪ければ直撃します.また,噴煙が無い時でも,風が強い時は,灰は上からだけでなく下からも舞い上がり鼻に入ってきます.そんな状況下でも観測機材をもって研究者たちは山頂を目指します.ここには世界最先端の研究をするための素材があるからです.
(なかみち はるひさ)
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