環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

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社会環境学専攻 環境法政論講座
赤渕 芳宏 准教授
境法学を専攻しています。古代ローマ以来の長い伝統をもつ法学のなかでも、環境法は(公害法とよばれていた頃を合わせても)4、50年ほどの歴史しかもたない“できたてほやほや”の法分野です。なぜ環境法学を選んだのか、という質問を受けることがありますが、これについては実のところ、まともな答えを持ち合わせていません。強いて言えば、環境法が〈環境の保全を目的とした法の総称〉と一般に定義されることからも窺えるように、環境保全という、より具体的・実際的な目的の実現に僅かながらでも役立つことができるのではないかと(身の程もわきまえず)考えたことや、環境法学では法の解釈とならんで法制度設計(法政策)に重きが置かれている点に学問的関心を抱いたこと、が挙げられましょうが、どれも感心されるほどの理由とも思えません。
たる研究テーマは、科学的な不確実性を伴う環境リスクを法によってどのように管理するか、また、法による環境リスク管理をさらにどのように統制するか、といったものです。こうした問題につき、化学物質の環境リスクを素材に、アメリカの議論を参照しながら考えています。ある化学物質が有害であるか否かを判断する最も重要な手がかりを提供するのは科学です。法律によって、たとえばある化学物質の使用や環境中への排出を規制するにあたっては、従来、それが有害であることが科学によって十分よく分かっているといえることが前提とされてきました。現時点においてその有害性が科学的に明らかとはいえないものは、規制をはじめとする法的管理の対象とすることは困難とされてきました。しかしながら、それでは、その後の科学の進展によって実は有害であることが明らかとなった化学物質が野放しとされてしまいます。かといって、有害かそうでないかが全く分からない物質を法的管理の下におくのも難しいところです。では、いかなる条件が整えば、いかなる管理が可能となるのか、それにはどのような法的制約があるか――このような問題について考えています。研究者としては(無論、教育者としても)未だ駆け出しの身ですが、これまでに思ったほどのことは成し遂げられず、内心忸怩たるものがあります。ですが、これからも私にできることを地道に積み重ねていきたいと思っています。
(あかぶち よしひろ)
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