環境学研究科
Graduate School of Environmental Studies

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  環境学と私
このコーナーでは、環境学研究科の教員がそれぞれの関心や出来事について広く語りかけます。

 鋼橋を長持ちさせる技術の開発

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都市環境学専攻 地域・都市マネジメント講座
助教 石川 敏之
ま,私が取り組んでいる研究は,我々の生活を支える社会基盤構造物の一である橋梁(特に鋼橋)を長持ちさせる技術の開発です.鋼橋などの大型な構造物は永久構造物のように感じられますが,自動車や家電製品等と同様にある程度の耐用年数が設けられております.ただし,鋼橋の耐用年数は,自動車や家電製品等と比べて非常に長く設定されています.また耐用年数に達したからといってすぐに壊れるあるいは利用できなくなるわけではありません.
かし,現実には,設計時の耐用年数に達する前に大きな損傷が生じているケースが多く報告されています.皆様もご存知の通り,2007年6月に国道23号線の木曽川大橋のトラス斜材の破断が生じています.また同年8月初めには,米国ミネソタ州ミネアポリスのミシシッピ川橋梁(トラス橋)の崩壊が起こりました.このような事例を受け,落橋や大きな損傷が生じないように鋼橋を維持管理することの重要性がますます注目されています.
さねて,交通ネットワークを担っている橋梁の落橋や損傷による通行止めは,我々の社会生活に多大な損害を招きます.さらに,通行止めによる渋滞の発生により,環境負荷を増大させています.したがって環境負荷低減の観点からも,鋼橋を健全に保つことが必要とされています.
たしが行っている研究の具体的な内容は,荷重の繰り返しを受ける鋼橋の耐久性の評価および炭素繊維強化樹脂板あるいはアルミニウム合金材などの軽量な材料を用いた軽微な損傷に対する簡易な補修法の開発です.軽い材料を用いる利点として,橋の自重の増加を軽減させるだけでなく,大型の重機を利用せずに補修が行えるため,低環境負荷で低コストな補修が実現可能になると考えています.今後,国内外を問わず鋼橋の維持管理は,ますます重要になってくると予想され,軽微な損傷に対する簡易でかつ低コストな補修法が必要になると考えられます.したがって,一つでも多くの鋼橋を長持ちさせるために,今後も上述の研究を行うことを考えています.
(いしかわとしゆき)