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ションが湧いてこない。これは脱炭素だけじゃなくて、環境問題全体ですごく大きい問題だと思っています。今、再生可能エネルギーに対する逆風って、ものすごいんです。ある意味「社会全体のためにみんなで協力しましょう」という話の限界が来ているのかなという気がします。地域や、自分たちの暮らしを良くすることを主たる課題にして、それを解決すると脱炭素にもなりますよ、といった結びつけ方が、私は大事だと思っています。ゴミの分別って面倒くさいじゃないですか。日比野先生の面白さは、その面倒くささに寄り添って、前向きにしている感じがする  んですよ。再生可能エネルギーであるということ自体にはあまり価値を押し付けない。非常用の電源になります、新しい地場産業になります、電気代安くなりますとか、もっと身近でちっちゃい、でもすごく具体的に腹落ちするような課題解決と、どう結びつけるのか。そこら辺がうまくできていないから進んでいかない気がします。この先、脱炭素目標の達成が危うくなってきたときに、どうなるか。やっぱり無理だったねという話になるのか、ものすごく強制的に押し付けられちゃうのか。そういう意味で今はラストチャンス。個人の利便性は損なわない形で、でも脱炭素も実現できる。まだチャンスはあると思っているんです。田中 建築で言えば、断熱することによって健康が向上する、高齢者のヒートショックが減少して医療に関わるコストが削減できる。それは社会的なコスト低減になる。いわゆるNEB「ノン・エナジー・ベネフィット」と言うんですけど、付加価値的なものの裏にあるコストもあると思うので、そういう評価の仕方が今後重要と考えています。再エネ電源を確保すると、災害時にそれが非常用電源になるというのは、北海道胆振東部地震でも再確認されました。再エネを持つことの付加価値を皆さん認識すると、もう少し普及につながっていくのかなと思います。丸山 ですが、生徒が地元の工務店と組んで、指導を受けながら教室の断熱改修をやるんです。断熱ってすごく効果が分かりやすいでしょう。特に長野県は寒くて学校の室内環境が悪い。それが断熱するだけで、心まで冷えるような寒さがなくなるわけで長野県の高校なん西澤丸山先生、大きな観点でお聞きしますが、先生が取り組む再生可能エネルギー推進の課題は何でしょうか。丸山私が最大の課題だと思うのは、ある種の「説教臭さ」。再エネにしても脱炭素にしても、社会のために大事なんだけど、それが個人や企業といった小さなプレイヤーの便益にちゃんと結びついてないんですよ。「大事な問題なので、みんなでがんばりましょう」と言って、そのあと放置している。やりたくなるようなモチベー個々人の便益につながる再エネの取り組みをススキを燃料に使った燃料電池の発電模様専門分野は電気化学。多様な資源の電気化学反応に取り組んでいる。燃料電池では、水素、メタン、尿素、自動車排ガス、都市廃棄物からの発電。電気分解では、メタンからのメタノール、プラスチックからの水素、バイオマスからのメタノール合成。日比野 高士 ひびの たかし05

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