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どコロナ禍にかかる時期でしたが、想定以上の研究成果を得ることができました。丸山一般的に工学って、なるべくまとまって量があるものとか、純度が高いものを生かす発想が多いと思っていて、汚くて混ざっているものを対象にする、そういう発想、どこから来たのかなと。日比野 環境学研究科に所属していると、工学から環境寄りに考え方が少しずつ変わっていきました。そうなると純物質を扱うよりも環境問題になり得るもの、例えばプラスチックゴミ、紙くず、雑草、剪定枝などが研究対象になっていきました。それを後押ししてくれたのがクラウドファンディングであって、市民の方が対象だという意識を強く持てました。丸山バイオマスって、プラントの仕様に振り回されているところがあって、技術に社会を合わせないといけないような。それに対して、在りものをなんとか生かすという、社会に技術を合わせこもうとするアプローチがすごく必要だし、すごく面白いなと思いますね。脱炭素は、合わせ技で解決していかないといけないので、二つの課題を同時解決できるような、つなげる技術がすごく大事だと思います。日比野やはり企業だけでなく、一般家庭も動いていかなければ、脱炭素なんてなかなかうまくいかないと思います。家庭や地域から出るゴミで発電し、その電気をエリア内で消費する。電気の地産地消ですね。古い話ですけど「バックザトゥフューチャー」という映画で、タイムマシンに改造したアメリカ車のデロリアンが、バナナの皮などのゴミを燃料に使って動くんです。もともとプルトニウムで動くものが、次の未来では家庭ゴミで動かすことができる。そういう未来を作り上げたいという思いもあり、ゴミを扱うことへの動機になりました。西澤面白いと思ったのは、いわゆる一般ゴミでやるということ。今までのバイオマスは、そのために回収するシステムが必要になって、それは上乗せになるじゃないですか。一般ゴミは行政のゴミ回収システムがあるから、それに乗っかればいい。新しいことをやるためにシステムや法律や制度を作るとなると、延々と時間がかかる。日比野新しい技術を普及させようと思うと、既存のインフラをうまく利用しないと実用が難しいですね。ゴミ回収は整備されていますから、資源として扱うにはうってつけです。西澤なかなか将来性のある話ですが、進める中で一番大きい課題は何ですか。日比野とにかくゴミというのは、非常に幅広で、しかも成分が多様です。例えばプラスチックは炭化水素、ご飯は多糖、肉はたんぱく質や脂肪があったりします。従って、個別の廃棄物について精査する必要があります。回収されたゴミ全部を流し込んでも、発電効率はなかなか稼げないという事態にもなりますので、実際どういうゴミがよくて、どういうゴミが使えないのか、仕切りをはっきりさせるのが今後の課題です。丸山ゴミを燃やして発電するのあるじゃないですか。それには勝てる感じですか。日比野原理的には勝てますね。ゴミ焼却の熱を使って発電する場合、熱分解やガス化が難儀であって、その結果、燃料利用率を下げてしまい、発電効率が上がらないと聞きます。燃料電池の場合はまともにガス化しなくてもゴミを酸化できますので、燃料のすべてを使い切れて、高効率につながる特徴があります。1960年生まれ。2021-2023年東海国立大学機構カーボンニュートラル推進室長、2022-2023年脱炭素社会創造センター長を歴任。環境学研究科では、地球規模課題9「46億年の歴史」幹事。文化庁文化審議会文化財分科会専門委員、博物館明治村建築委員、一般財団法人名古屋大学出版会理事長西澤 泰彦 にしざわ やすひこ04

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