西澤 脱炭素社会の実現は、再生可能エネルギーを効率よく電力に変換し、その電力を有効利用することにかかっています。電気を損失することなく蓄電、運搬すること、エネルギーキャリアの開発、また未利用のバイオマスや廃棄プラスチックからエネルギーを回収する技術も求められています。一方再生可能エネルギーは設備が複雑で大規模、今まで存在しなかった場所に立地するので環境への影響、地域の人々が反対するケースも出ています。脱炭素社会の構築に、どんな課題と展望があるのか。環境学研究科が研究と教育の核として掲げる10の地球規模課題の中の「エネルギーの確保と供給」を担当される日比野先生、丸山先生に、建築設備が専門の田中先生を交えて議論していきます。まず日比野先生、「ゴミ×創エネ」に挑戦したお話からいきましょうか。日比野 2014年頃からバイオエネルギーの研究を進めていて、当時は、私も含めてほとんどの方がバイオマス中のセルロースやリグニンといった純成分を燃料にした研究が多かったですね。2018年に名古屋大学が始めたクラウドファンディングに参加するというお話をいただいて、それなら一般市民向けにアレンジし直して、純成分よりはむしろ未加工で、しかも大量に廃棄されているバイオマスからエネルギーを取り出そうと考えました。それが「廃棄物から電気を作る燃料電池の開発」ということになり、クラウドファンディングで「ゴミがエネルギーに!地域社会で取り組むゴミゼロ×創エネ活動」というプロジェクトが始まりました。ここではゴミ問題とエネルギー問題、二つの課題の同時解決をめざしました。ゴミから電気を作ることができれば、廃棄物の処理、創エネの実現、災害時の電力供給など持続可能な社会の実現に向けた画期的な仕組みになります。プロジェクト成立後、固体酸化物燃料電池を試作し、バイオマス、プラスチック、食糧残渣成分を使用して発電試験を行いました。ちょうゴミ処理と創エネ合わせ技で同時解決をめざす日比野 高士丸山 康司都市環境学専攻 教授都市環境学専攻 教授社会環境学専攻 教授 都市環境学専攻 教授(協力教員)員) 03脱炭素社会の構築に向けた再生可能エネルギーの利用と普及西澤 泰彦田中 英紀
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