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ざ崎きにはそのブルーの海を背景に、白い        梅雨のころ、沖縄県先島諸島の宮古島周辺では、大潮の夜を待ってサンゴが産卵をします。この時期、宮古島周辺では数々の神秘的な生命のドラマが繰りひろげられます。宮古島は周囲を珊瑚礁に囲まれた自然豊かな島で、青い海の美しさは世界一と私は思います。島北部の西に平しへ安ん名な風車が回っています。この宮古島を、2003年9月11日、スーパー台風マエミーが直撃しました。最大瞬間風速 74.  1m/sの暴風により、西平安名崎の風車は倒壊してしまいました。十分な耐風速だったはずですが、スーパー台風の被害は予想できません。スーパー台風は最大地上風速130kt以上の台風のことで、図に示すようにフィリピン東方海上を中心として、年平均で3〜4個発生します。その存在領域は先島諸島までのびています。自然が豊かであるということは、それだけ自然が厳しいということなのです。台風には最大到達可能強度という、阻害要因のない環境で到達できる強度の理論的上限値があります。スーパー台風はその上限値に達する台風で、台風固有の基本的構造をしていると考えられます。そのような非常に強い台風については、中心気圧の推定値に大きな誤差があるとともに、強度予報の難しさが問題となっています。さらに大きな問題は、地球温暖化とともにその強度が増大するだけでなく、存在範囲が先島諸島から日本本土に広がることです。宮古島の風車の倒壊からわかるように、温暖化の緩和に不可欠な自然エネルギーの生成装置は、現状では強度が不十分で、未来の台風に耐えうるものにしなければなりません。これもまた大きな問題となるのです。このようなスーパー台風について、名古屋大学を中心とする研究チームは、航空機を使って直接観測を実施しています。高高度を飛行するジェット機で、台風周辺だけでなく、壁雲を突き抜けて眼の中に入り、中心気圧と最大風速をドロップゾンデにより観測しています。台風は海を冷やすことで、サンゴが生息できる温度にするという役割もあります。温暖化により台風の強度、進路、発生数などが変わると、環境の変化により先島諸島のサンゴも生息できなくなるかもしれません。温暖化が緩和され、美しい宮古島の環境が今のまま維持されて、梅雨の時期にはサンゴの産卵がみられるような未来であってほしいと願います。地球・都市・社会3つの視点で「これから」を考えます。今回のテーマは自然と社会の相互作用としての災害未来予測環境学のスーパー台風の1年あたりの平均存在数気象庁ベストトラックデータからカウント坪木 和久専門は気象学。台風や豪雨を中心とした雲・降水現象が主な研究対象。これらについて雲解像モデルを用いた数値シミュレーション研究とともに、航空機を用いた台風の観測プロジェクトを行っている。VOL.3508スーパー台風が上陸する未来宇宙地球環境研究所 気象学研究室 坪木 和久 教授

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