HTML5 Webook
7/12

受けないかは地盤の良いところに住んでいるか、いないかという環境でも左右されますね。それから、これは研究科内の一部で議論したことがあるんですが、自然災害とエネルギー問題は不可分で、原子力発電を止めて火力で補えばCO₂が出る。太陽光パネルを増やせば、今度はそれが山崩れを引き起こすかもしれない。地球環境、気候変動という面においても、自然災害は切っても切れない問題になってきているという認識です。社会科学の分野からすると、そういう人工的な環境変化に目が行きがちですが、それこそ地球そのものの自律的な運動があって、それが災害を引き起こすこともあるわけで、あまり通念的な意味での環境問題として自然災害を見てしまうのもどうかなと。田所先生と話をする中で反省させられた面もあるんです。私にとって一番のキーワードは、暮らし続けるということ。災害も、エネルギー問題もそうですけども、人が生きていく上で、いろんな問題に出くわしますが、それにも負けずに問題を解決して生き続ける、暮らし続ける。このキーワードが私は一番しっくりきますね。このグループのコンセプトでもあるのですが、自然は災害だけをもたらすわけではなく、恩恵も与えてくれる。だからうまく折り合いをつけて住み続けていくということですね。対峙するわけじゃないんですよね。一緒に生きないといけない。今後の災害研究において、重要な課題、展望やご自身の目標などお聞かせください。東日本大震災以降、防災減災・災害復興に関係するいろんな学会・協会が集まって防災学術連携体というものができました。理学、工学だけでなく社会科学も入って一つのテーブルに着いて、いろいろ情報交換をしましょうと。それまではあまりなかったと思うんです。やっぱり理系の地震学にプラスアルファして、人文社会系の方とも一緒に取り組む流れになってきていると思います。そういう意味では、我々、すぐ隣に違う分野の方がおられるのは強みだから、そこをもっと生かしていかなきゃいけないと思います。私自身の研究としては、やはり他分野の研究について知ったり交流したりする中で、必要に応じて共同し、自分の立ち位置をその中で考える。そういうことをしていくべきじゃないかと考えを強めるようになりました。インフォーマルな関係ができて話をすると、他分野の研究のこともなんとなくわかってくる。耳学問みたいなものが自分の調査に役立っていると感じます。そうやって視野が広がったことで今は災害の研究が面白くなり、防災への貢献に対するモチベーションも高まった気がします。森 人と話すことで自分が知らないことを知る。世界が広がる感じで、それが楽しいっていうのがありますからね。それは研究者の本質でしょうね。最初は耳学問でもいいから、いろんなことをインプットしていったら、そういうところからいいアイデアが浮かんでくるのだと思います。今日はありがとうございました。田所 山崎2024年7月5日名古屋大学環境総合館で室井室井森森山崎田所 室井耳学問から始まる異分野間の対話と共同山崎 敦子 やまざき あつこ専門は古海洋学、生物地球化学。サンゴ礁をフィールドとして、気候変動と物質循環、生態系の変遷の相互関係の理解をめざして研究している。環境学研究科の広報委員長として本トークでは司会を務める。07

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る