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田所室井 森田所山崎田所室井島地震については、それぞれのご専門から、どう見ていらっしゃいますか。私は現場に行っていないのですが、驚きですね。4mも一気に隆起するようなことが、私の生きているうちに日本で起こるのかって。能登半島はそういう隆起が過去に何回も起こって、ああいうせり出したような形になった。だから地球科学的に言うと、地球の自律的な動きであり、まさに能登半島ができる過程を見たことになるんです。調査ではないですが、現地に一度行きました。地震と言ってもエリアによってかなり多様な表れがあると感じました。液状化しているエリア、火災で燃えてしまったエリア。局所的に家が倒れていても、その隣は普通に建っていたり。虫食い状の被害という印象で、面的な復興はすごく難しいだろうなと感じました。もともと半島というのは、交通事情も悪く人口も減り続け、過疎が進み、原発の立地も多い地域です。その一方で昔から海上交通の拠点で外の地域とのつながりがあり、それがある種の文化を育み、観光資源にもなっています。そういう地域をどう位置付けて、どう復興させていくのか。能登半島だけでなく、今後似たような場所で地震が起こる場合の試金石になるのではないかと思います。私は地震ハザードのことが気になりました。政府の地震調査研究推進本部が公表している確率論的地震動予測地図では、石川県の大部分において、2020年からの30年に震度6弱以上の揺れが起きる可能性は最大3%とされていた。なのに、最大震度7の能登半島地震が起きてしまった。確率論的地震動予測地図を公開する意味があるのかという意見が新聞などにあり、それ、どうかなと思って、ひどく印象にありました。確率論的地震動予測地図の使い方はもう少し注意が必要だと思いますね。そうですね。確率論的地震動予測地図は、安全か危険かを色分けしたものではありません。だけど色が薄いところは安全だと思ってしまう。危険度が高いか低いかと言ったら、相対的に低いと言ってしまっていますが、それを安全と見るのは間違いで、だから表現の仕方をどうしようか、今考え始めているところのはずです。正しく使われていないんだなって思います。先生方の研究が災害対策や防災の取り組みにどう生かされるべきか、環境学としてアプローチする際の課題など感じることはありますか。地震の場合難しいのが、リアリティがない人が多いんです。台風だったら、毎年来るので、川が増水するとか実感としてわかりますが、大きな地震を経験した人はそれほどいない。それに、プレートが歪んで、マグニチュードがこれくらいの地震が起こりそうと言っても、ピンとこない。結局のところ、私の家は、私の地域はどうなるの?って聞かれるんですよ。いつも、そういうところを伝えていくにはどうしていったらいいのかと考えています。ハザードと脆弱性という分け方をしますと、社会科学系の僕らは逆に、脆弱性の方しか見ないようなところがあって、ハザードの分布がどうなっているのかわかっていないんですよね。この地域は高齢者が多いとかは調べるんですが、そこが安全な場所なのか、そうでないのか。ハザードの面に関してちゃんと把握していない。きちっとした防災対策を考えるにはハザードの知識が必要で、ここ完璧はない災害情報更新され信用できる続けるからこそ田所 敬一 たどころ けいいち専門は地震学、海洋測地。南海トラフや南西諸島の海域で地殻変動の実測からひずみの蓄積状況を研究。著書に『いま活断層が危ない─中部の内陸直下型地震』(共編著、中日新聞社、2006年)など。05

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