山崎 室井 今日は環境学研究科が掲げる10の地球規模課題のうち、「自然災害」について担当される先生方にお集まりいただきました。災害多発国の日本に住む私たちは、豊かな自然の恩恵を受けると同時に、時として自然現象が脅威となり、これに人や社会が接したとき自然災害に至ります。災害へと転化する過程には、さまざまな社会的要因が介在し、日常生活を問い直すことになります。大規模地震や気象災害などへの関心が高まる中、環境学として災害への学際的なアプローチはますます重要になると思います。まず先生方のご研究と災害との関わりからお話しいただけますか。都市社会学、地域社会学など地域調査を中心とした研究をしてきました。最初に関わったのは雲仙普賢岳噴火災害。九州大学にいた時です。名大に来てからは地理の高橋誠先生たちとスマトラ島沖地震の被災地の復興調査に長く関わりました。東日本大震災の被災地の復興についてもスマトラとの比較を意識しながら調査するなどしているうちに、自分自身、災害への関心は高まってきたと思います。森 私の専門は建築構造です。中でも、特に構造信頼性工学という、構造物や荷重・外力に存在するさまざまな不確かさを確率・統計論を使って定量的に取り扱い、構造性能を評価したり、設計したりする分野です。また日本にいるので、耐震工学は譲れないところです。信頼性工学から派生するリスク論なども研究テーマです。建築構造ですから建物の安全性が一番の関心事で、災害は避けて通れないのです。研究者として最初の災害の経験は、1995年の阪神・淡路大震災でした。地震の2週間後に関西在住の日本建築学会の人たちと神戸市の建物の全棟調査を行ったときは衝撃を受けました。それまで日本の建築・土木構造物は安全だという「安全神話」なるものがありましたから。その1年前、1994年1月17日にロサンゼルス郊外を震央とするノースリッジ地震があって、高速道路が壊れたりしましたが、あれはアメリカの話で日本では起こらないと言っていたんですけど、1年後に日本で起こってしまった。神戸市庁舎から三宮、外国人居留地と北に向かって調査を進めていくと、地盤の違いからか被害の様子がだんだん変わっていったのを覚えています。環境学からアプローチする災害研究のポテンシャル都市環境学専攻 教授地球環境科学専攻 講師附属地震火山研究センター 准教授社会環境学専攻 准教授授 山崎 敦子(司会)田所 敬一03環境学によるアプローチと対策への貢献を考える森 保宏室井 研二自然と社会の相互作用としての災害
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