■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■編集後記● 環境学研究科の広報誌をお手にとっていただき、ありがとうございます。今号では、本研究科のスタッフが、災害を「自然と社会の相互作用」としてより深く理解し、より実効性のある形で対策に寄与すべく、さまざまな角度から研究を重ねている様子を特集しました。環境学研究科には理学、工学、社会科学の多岐にわたる分野を専門とする約160人の教員が在籍・参画し、災害以外の課題も含めて、学際的な組織構成を生かしたユニークな研究を行っています。ウェブサイトではその活動をさらに詳しくお伝えするとともに、関心のある学生や、一般・地域の方々にもご参加いただける催しのご案内も発信しています。10月には研究科のメインのウェブサイトを、装いを新たにしてオープンする予定です。ぜひご覧ください。(三上直之)地球環境科学専攻 生態学講座 博士後期課程2年2024年9月 大学院進学にあたって、それまでの分子生物学から大転換。動物に小型記録装置を装着し生態を解明するバイオロギング研究をしたいと、環境学研究科にやって来た屋敷智咲さん。依田憲教授のもと博士前期課程の2年間、新潟県粟島でオオミズナギドリを対象に、バイオロギングの手法である野外調査とデータ解析の技術を身につけ、フィールドに出る楽しさを実感しました。「しんどくてもやめようと思ったことはない」という屋敷さんがずっと心に留めていたのは、「三重県に誰もバイオロギング調査したことがない無人島がある」という依田教授の言葉。博士後期課程に進学した2023年、屋敷さんはその無人島を「新たなフィールド」として立ち上げることになりました。 三重県の大島*。面積15ha、常緑広葉天然林で覆われ「大島暖地性植物群落」として国の天然記念物に指定。オオミズナギドリが繁殖していることはわかっていましたが、その移動経路、採餌場所は謎に包まれていました。誰も手を付けていない未開拓の島の調査。「私が初めて」「めちゃくちゃ面白そう」「挑戦したい」。関係行政機関の許可や漁船の手配に奔走し、2023年7月に念願の初上陸。下見で繁殖地の地形や巣穴の様子を確認し、同年8月の繁殖期に本格的なバイオロギング調査を開始。夜中に定期的に巣穴を回り、巣に手を入れて鳥を確認。暑さと虫に辟易しながら目標数のロガーを装着。約1か月後、再び島入りし無事データを回収しました。 未開拓のフィールドで過酷な調査を終えた屋敷さん。今は、大島で得た手つかずのデータを前に、自分の思惑を軽く越える海鳥の行動を面白がりながら、その採餌場所解明に挑んでいます。表面海水温、風、クロロフィル濃度。移り変わりやすい海洋環境の中で海鳥は何を見て餌場を選ぶのか。自分の知識、解析技術をさらにアップグレードして、研究の着眼点を探す日々です。*所在地は三重県北牟婁郡紀北町屋敷 智咲さん Yashiki Chisaki【環・47号 広報委員会】 三上 直之(環47号編集委員長)山崎 敦子(広報委員長)後藤 佑介齋藤 輝幸〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院環境学研究科TEL.052-789-3455www.env.nagoya-u.ac.jp/李 時桓増沢 陽子谷川 寛樹編集/編集企画室 群デザイン/オフィスYR名古屋大学大学院環境学研究科■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■名大さんが行く35vol.47
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