環未境来学の予測 まずは筆者の研究紹介をさせていただきます。主に電気化学を専門分野とし、最近ではススキを燃料にした燃料電池の研究開発を行っています。ススキの主な成分であるセルロースは水素を含んでいますので、燃料電池の燃料として用いることができます。燃料電池は動作条件を少し変更すれば、水素製造にも用いることができます。電気や水素の生成を通して、脱炭素社会に貢献しSDGsを達成することを目標としています。(写真)話は変わりますが、昨年からよく耳にする言葉に〝メタバース〟があります。自分をアバターで表現した仮想空間(仮想現実)、が一般的な表現で40代の筆者には現代版セカンドライフという表現がしっくりきます。デジタルな仮想空間で分身を操りバーチャルな体験をします。ビジネスニュースで登場するので商用目的の技術と感じるかもしれませんが、大学生を含め若い世代にとって仮想空間はSNSやゲームでおなじみです。特に10代在では量的にも存在感を増しています。すでに〝現実空間〟と〝仮想空間〟を使い分けているということです。そんな仮想空間での経験が親和性高くオンライン授業でも生かされていると感じます。当初は教員、学生の双方に多大な負荷がかかったのは事実ですが、学期を繰り返すごとに成熟していき、質問はチャット、提出物はスマホで写真、プレゼンはパワーポイントで資料共有など、機能をフル活用してオンライン授業を成立させてくれます。発言も一斉に話しだすことはなく、挙手サインを出し順番を守り秩序が保たれます。自然と皆が〝ロールプレイング〟しているということです。仮想空間を利用した独自の授業も可能になりました。街づくりが可能なオンラインゲームを利用し、SDGs(17のゴールと169のターゲット)の取り組みを仮想空間で実施するものです。グループワークとすることにより、限られたリソースの中で実行可能な施策を計画・実行するというプロセスを学ぶことができます。オンライン授業に仮想空間を取り入れた授業設計はウィズコロナにおける一つの雛形になりうると感じています。私たちはSDGsの取り組みや脱炭素社会を実現するために、それぞれの専門分野に基づいて規模や時間軸を設定し地球規模の問題の解決をめざしています。それゆえ、進化する情報技術を果敢に取り入れウィズコロナのような急激な社会変化にも柔軟に対応できるのが環境学研究科の良さであると思います。これを研究・教育に生かし、「研究成果を仮想空間で実現・表現し、それを国内外から参加するアバターが体験・評価し、議論をしている」これが私の未来予測です。20代が一日3時間スマホを利用する現沖縄に群生する背の高いススキ長尾 征洋専門分野は電気化学、資源化学、機械学習。再生産可能なバイオマス資源を利用し水素や電気を作り出す研究をしている。機械学習により衛星画像からバイオマス資源の分布を判定しバイオマス量を推計する研究にも着手。環境と仮想空間氷河の行く末を予測する都市環境学専攻 環境機能物質学講座 長尾 征洋 准教授地球環境科学専攻 気候科学講座 藤田 耕史 教授
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