ない。そこから再生可能エネルギーの研究と並行して、田舎の地域再生、特に若い人の定住支援という研究をしています。私はいつも田舎の方から都市を見ています。明治以降、日本は成長する社会が150年間続いて、特に戦後の高度経済成長期は、成長に最適化するように非常に大きく社会が変わった。そして豊かになりました。しかし、その結果として人口が減り始め、少子化の問題が出てきました。成功したがゆえの縮小に入ったわけです。成長する社会の仕組みが基本的に変わらないままで縮小に入ると、いろんなところに歪みが発生します。空き家もしかり、経済格差もしかり。ですからその縮小の先に、持続可能な社会にソフトランディングしていく展望が必要ではないかと思っています。日本の食料自給率やエネルギー自給率のことを考えると、人口が減るのはある意中田 口減少を止め、その時の安定した社会の姿について考えなきゃいけない。私には、豊かな森林がある日本の自然を生かした、農林水産業と観光がメインの落ち着いた国というイメージがあるんですね。その元になっているのは、田舎に移住した若い人たちの価値観です。お金を儲けて成長を続けようというのとは真逆の、自分で食べるものを自分たちで作りながら、自然の中で子どもを育て、コミュニティの中で暮らしていきたい。自然環境と調和した生き方をしたいという思いです。彼らのような感覚の延長に、そういう社会像が見えてくるのではないかと思っています。私は環境経済学という経済学の一分野を専攻しています。先生方のよ味で幸いかもしれうに特定のフィールドがあるわけではない。だけど今はなく、どちらかというと理論系。都市ゼロに向かって物そのものを直接の研究のテーマとはし事が動いて、このていませんが、たとえば所得の格差を先の社会の大きな考えていく時に、都市の中のいろいろビジョンが全然出な空間での分布をみることがありまていない。どこかす。所得が高い人は暮らしやすい緑ので出生率を上げ人多い場所に、一方で湾岸の工業地域には所得の低い層が住む。そういう分布の分散が大きい場合に環境政策はどうなるのか。また、高度経済成長による人口増加で都市がどんどん拡大し、人口が郊外に流れドーナツ化現象が起こった。これがバブル崩壊後、地価が下がって都心に人々が戻ってきます。ちょっと所得に余裕のない人が住んでいたような沿岸部を再開発して、ウォーターフロントのタワーマンションにする。当然それは相当な所得のある人しか入れないから、余裕のある高齢者が戻ってきたり、豊かな共働きの人たちが移り住んでセレブタウン化し,家賃が高騰して地元民が転出するような事例も増えてきているのかなと思っています。今は、コロナ禍においてIT化が進展し、都会を離れてリモートで仕事をして地方で暮らす。そういう生き方の選択肢も増えてきて、都市の人口圧力が多少緩和する状況にもなってきたのかなと思ったりしています。直接関係は薄いかもしれませんが、環境と移民の問題を扱い始めました。たとえば温暖化が進んだとすると、その影響でもともと住んでいた場所に住めなくなるといった理由で新しい移民の形が出てきたりする可能性があります。例えば途上国では農村から都市への移住が起こるかもしれない。温暖化によって農業がやりにくくなり農村地域で食べていけなくなった人が溢れ出すと、都市で失業者が増えたり賃金の低下を招いたりする。それに押し出されるように都市に元々いた高所得者、技能を持った人が外国に移住する、そういうことが起こる可能性もあるのではと考えています。これを日本に置き換えると、今後が 私は山が好きでたまに出かけることが気になるところです。リモートワークの進展やIターンなどで少し都市の圧力が緩和されるとは思います。一方、あるのですが、昨今、異常気象が増えて、通行止めの道に出くわして迂回しなければならないことが増えて、修復しきれなくなっている現実があるように感じます。今後環境面から圧力がかかっていく可能性がある。そういった時にどうやって折り合いを付けたらいいのだろうかと気になります。温暖化が招く都市の社会的変化高野 雅夫 たかの まさお博士(理学)。木質バイオマスエネルギーやマイクロ水力発電などの再生可能エネルギーの技術開発とそれらの普及を通した里山再生について、農山村をフィールドとして研究・実践を行う。
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