高野加藤 小松 環境学研究科の「中長期ビジョン」で提唱された「地球規模10課題プロジェクト」。その一つ、「都市環境の将来適応策と新たな住まい方」について、担当である小松先生、中田先生と私、加えて高野先生を交えて、これからの都市の在り方について広く議論し、研究科としてどういうことができるか考えを進めたいと思っています。まずは先生方が都市について取り組んでおられること、考えているホットな話題がありましたらお願いします。私の専門は建築で、主に公共建築の計画、設計に取り組んでいますが、今の社会のニーズや実像に合った公共建築を創造したいと常々考えて、研究や実践をしています。また最近は、ひとつの役目を終えた建築、例えば廃校も研究しています。日本の学校建築は、単なる教育機関の建物ではなく、地域生活の記憶や思い出の器であり、また学区や町内会など社会単位の起点になっています。ですので、少子化の影響で統廃合するとなると反対の声が上がります。少子化は進むので、おそらくこれから各地で社会的な問題となるでしょう。そんな地域と密接な存在である場所を、どんな役割をもった場所にどう転換するか。もう一つ、行政に依頼されて携わるようになったのが空き家対策です。環境学研究科と連携協定を結んでいる愛知県東浦町でも有識者として関わっています。空き家や空き地もこれからどんどん増えていきます。どう処分するのか、もしくはどんな新たな価値づけができるか。今までは「成長と開発」という大きな社会の潮流と価値観の中で、どう建築をつくるかを考え、これからの「集約と再編」の中で、建築は何ができるか。さらには、他の分野、特に社会の制度やルールへどう波及できるか。超学際的に研究、実践する道を探っています。私は地球物理学が専門で、環境学研究科ができた時に再生可能エネルギーの研究を始めました。日本で有望なのは木質バイオマスで、そういう資源があるのは田舎ですので、田舎に行ってフィールドワークを始めました。よくわかったのは、日本の田舎は森林や水は世界でピカイチ。素晴らしい資源があります。だけどもう一つよくわかったのは、若い人がいないということです。せっかく資源があっても管理も活用もできない。再生可能エネルギーという話をするのであれば、まず田舎の過疎問題を何とかしなくてはいけもう、今の延長で都市は語れない10課題プロジェクト https://www.env.nagoya-u.ac.jp/research/theme.html環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター 教授社会環境学専攻 准教授地球環境科学専攻 教授都市環境学専攻 教授教授 中田 実高野 雅夫心地よいソーシャルディスタンスをめざして加藤 博和(司会)小松 尚都市を乗り越える
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