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編集後記● コロナ禍で三密回避が感染拡大抑制に有効とされたことで、密であることがメリットの源となっている都市のあり方が見直されています。「エコラボトーク」では、各先生の「都市論」をお話しいただき、それぞれの着目点の違いを聞くのが興味深く、それでいてジグソーパズルのように各先生の考えがうまく整合して絵を形作るような方向に話が進み、司会進行をしていて楽しかったです。そして最後に出てきたキーワードが「心地よいソーシャルディスタンス」。臨場感をお伝えすることは難しいですが、環境学研究科ならではの広い視野を感じ取っていただければ幸いです。                                  (加藤 博和) 中国からの国費留学生、李芳星さん。西澤泰彦研究室で博士論文に取り組んでいる。研究テーマは、19世紀末から20世紀前半に日本に留学した中国人建築学生の卒業後の進路とその活動を明らかにすること。日本で学んだ建築留学生たちの進路を調べることで、彼らが日本の建築教育からどんな影響を受け、帰国後の中国でどのような役割を果たしていったのか、日本と中国の関係を「建築留学生」という視点でとらえようとしている。 国立国会図書館の学校一覧や日本建築学会、日華学会などの資料を整理することで、1906年から1945年にかけて2022年3月【環・42号 広報委員会】 加藤 博和(環42号編集委員長)淺原 良浩(広報委員長)中川 書子小松 尚〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院環境学研究科TEL.052-789-3455www.env.nagoya-u.ac.jp/日本の教育機関26校に在籍した254名の中国人建築留学生を拾い出し、彼らの中国での進路を中国政府機関の資料や技師登録名簿などから追った。「帰国後の254人を調査するのはむずかしかった」と李さん。日中事変に続く内戦、激しい時代の状況が建築留学生たちの足跡を消し去ったのかもしれない。それでも254人のうち中国に戻って就職した137名の情報を得ることができた。その多くが中央政府、地方政府で、主に建築工事、交通や都市建設関連の仕事に就いたことが判明。また、民間では設計だけでなく、施工の分野でも活動し、さらに建築留学生の多くは中国の建築学科の設立や発展にも寄与していた。 「調査対象の大部分は無名な留学生。日本の資料にあった人の名前を、中国の地方政府の工務局局長としてみつけたときはうれしかった。建築家ではなく、行政の職員として都市の建設に貢献したのだと思う」と李さん。設計だけでなく施工、構造、材料などオールラウンドに教える日本の建築教育を受けて、図面に名は刻まれなくとも、多くの留学生が中国の発展に役割を果たしたのだ。 李さんの夢は、いつかこの名もなき中国人建築留学生たちの足跡を本にまとめること。どんな時代でも異国の新しい環境で貪欲に学ぶ留学生にエールを!都市環境学専攻 建築・安全マネジメント講座 博士後期課程李芳星(fangxing Li)さん赤渕 芳宏室井 研二谷川 寛樹編集/編集企画室 群デザイン/オフィスYR名古屋大学大学院環境学研究科中国の档案館は日本の公文書館に相当する名大さんが行く30

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