地球温暖化対策であれば二酸化炭素を減らす。予測したら対応することが大事。3つ目として歴史から学べることは、社会の変革。気候変動は大きな不幸を招きますが、人間社会に変革を迫るタイミングでもある。ある意味、それを好機と捉えて社会を変えていく。単に予測し、予防するだけではなく、影響を受けるからには、それを乗り越えられる社会の仕組みをつくっていく、それが重要だということを歴史は示していると思います。現代社会における社会の変革の道筋と、弥生時代のそれは全く違うのですが、それぞれの時代に生きている人が真剣に考えることが大事です。未来は、現在や過去とは違います。歴史的にも社会には多様性があるということを理解して、変わっていくことが必要だと思います。ですね。それには政策などのレベルでの動きの他に、一人ひとりの日常の行動変化、選択も必要だと思うんですね。子どもが学校からSDGsのパンフレットをもらってきたんですが、小学校から学ぶ門脇 本当に社会の変革は大事のだと驚きました。教育で人間の価値観を変えられれば一人ひとりの行動変化が起きる。これはすごく大きな力だと思います。歴史を見れば常に成長、拡大ではなく、現状に対応した多様な行動変化があったんだというところを学び取っていきたいですね。堀 なにごとも規模を大きくし過ぎないということが重要だと思います。また、我々のように日本の人口が増えていた時代に生まれた人間は、まだ競争原理とか成長主義の価値観のなかにいる。でも人口減の時代に生まれた今の子どもたちはそうじゃないかもしれません。たぶんそういう人たちがこれから社会を変革する役割を担っていくのでしょうね。まさに今言われたことが重要で、歴史を見ると現代のよ中塚 うな成長第一主義の時代はほとんどないんですね。多くの時代は、特に環境が悪くなった時代は、成長ではなく持続可能性を意識した社会づくりになる、その中には今の我々からすると、身分制があったり、競争を抑えたり、受け入れられないシステムもたくさんあるのですが、地球環境問題が出てきている今日、内なる成長主義を人類の知恵でコントロールしていかなくてはいけない。つまり成長第一主義は、最終的には不安定で種の絶滅、社会の崩壊をもたらすということを歴史から学ぶことができると思います。良いことも、悪いことも教訓としてもう一度歴史に学ぶことが大事なのかなと思います。歴史を見ると、長期にわたり続いた社会や経済があった一方で崩壊・消滅したものもありました。こうした歴史的事実から教訓を得るためには、両者の間で何が違ったのかを慎重に見極めることが重要だと思います。繁栄した集団や社会経済は「優れていた」と簡単に片付けるのではなく、当時の人々の行動や社会、そしてそれをとりまく環境を正確に復元することが必要だと思います。その復元に基づいて、当時の人々がどのような問題を抱えており、それにどのように対応したかが具体的に明らかになればよいと思います。その対応の結果どうなったか、という点は歴史的事実から知れることが強みだと思います。そのためにも、既成観念にとらわれず、客観的な方法で多面的な観点から過去へアプローチしなければならないと思います。学際的な歴史研究は以前からも目指されてきましたが、過去の自然と人の相互作用から教訓を得るためにも、その必要性がさらに高まっていると言えるかもしれません。門脇 門脇 誠二 かどわき せいじ2007年トロント大学人類学部博士課程修了(Ph.D.)。2010年より現所属。専門は先史考古学。西アジアで遺跡調査を行い、人類進化に伴う文化進化や農業発生プロセスの研究を行う。
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