ジェクトリーダーとして参加し、その成果をまとめた『気候変動から読みなおす日本史』を刊行しました。先史古代から近世まで、過去の気候変動に対して人々がどう対応したかということを、詳細な気候変動のデータと歴史学や考古学のこれまでの膨大な蓄積を対照させて、新しい議論を行っています。堀 間の生活の場になっている沖積平野を対象に、地形やそれを構成する堆積物を観察・分析し、それらの形成過程を明らかにする研究をしています。興味があるのは、最終氷期最盛期(約21000年前)以降の環境変動、特に氷河性海水準変動に対して平野がどのように応答してきたかという点です。というのは地質学でよく知られた斉一説ですが、洪水や津波が起こったときに低地にどういった変化が起こるのか、どのような堆積物がたまるのかを実際に見に行って、過去の地形や地層の形成過程の解釈にどう生かせるかについても考えています。専門は自然地理学で、主に人「現在は過去を解く鍵である」平井 私は環境問題というより防災に関わることをしております。私自身のベースは地震学です。現在は建築の耐震工学に関連して、地震による強震動の分析、予測、地震の揺れを増幅させるような地下構造の探査、そういうことを専門にしています。またこの近辺の災害、特に地震とそれに伴う津波の調査も行いながら人材育成的なこともしています。それと並行して、減災連携研究センター設立当初から古文書勉強会を主催しています。古文書を解読して過去の災害を調べようという取り組みです。今日呼ばれたのはこちらの方ですね(笑)。門脇 私は、旧石器時代と新石器時代、人々が狩猟採集の生活をしていた時代から農耕牧畜が始まる時代までを対象にした考古学研究をしています。遺跡の発掘で出てきた石器、動物骨、植物遺存体、建築物などを分析し、昔の人がどのように社会や文化を築いてきたか。それがどういうふうに変わったかを調べています。地域としては西アジア、中近東地域に興味を持っています。門脇 考古学や歴史の研究は、いまだ ています。発展史観に囚われているところがあります。野蛮な時代から狩猟採集、農業、そして文明が起こったというように、人間は足し算をして発展してきたという考え方です。今回あらためて環境問題を考えたときに、昔の人の環境問題に対する応答は、必ずしも拡大成長だけではなくて、柔軟な応答があったのではないか。そういうところから読み取れたらいいなと思っの自然と人の相互関係についてですが、一年単位の気候の復元からテーマに掲げました過去中塚 見えてきた気候変動に対して、過去の人たちはどう影響を受けてきたのでしょうか。具体的な例がありましたらお願いします。一年単位の復元データを見ますと、数年周期のエルニーニョ南方振動からボンドサイクルと言われる千年周期の変動までがきれいに出ていて、そこから過去の気候変動が日本社会に大きな影響を与えていることがわかってきました。千年周期の変動から見て行くと、たとえば弥生時代のムラは、低地に環濠集落を形成していましたが、弥生時代中期末に水害が増えたことで住居だけが高台に移り、水田との距離ができて、田の収穫物を盗まれる恐れが出てきました。その結果、弥生時代後期は戦乱の時代になりましたが、やが*高分解能古気候学と歴史・考古学の連携による気候変動に強い社会システムの探索気候変動と社会の変化中塚 武 なかつか たけし博士(理学)。専門は同位体地球化学と古気候学。同位体比を使った地球表層の物質循環の研究の後、近年は樹木年輪の酸素同位体比による気候と歴史の関係の解明に取り組む。
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