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名古屋大学大学院環境学研究科エコラボトーク環境学の未来予測 28地球環境問題へのアプローチ 吉田 英一/ジンチェンコ アナトーリ/内山 愉太環境学の授業拝見! 名大くんが行く 28今号の表紙から読み解く環境学のキーワード28地球環境科学専攻 教授社会環境学専攻 准教授減災連携研究センター 助教地球環境科学専攻 名古屋大学博物館 講師 表紙の写真は、筆者がヨルダンで調査する旧石器時代の遺跡(6万年前頃)から望む風景である。「空っぽの世界」のイメージとして掲載した。近代以前は「空っぽの世界」と言われ、環境問題を抱えた現代の「いっぱいの世界」と区別されることがある。しかし過去にも環境問題があり、その記録から現在の環境問題について教訓を得ることができるのではないだろうか。 ヨルダン付近では、20万年前には体重800kgもあるウシが立派な石槍で狩猟されていた。その技術は当時のホモ・サピエンスやネアンデルタール人の増加を促したが、5万年前にかけて狩猟圧のために大型獣の獲得量が減少した。その時、ホモ・サピエンスは狩猟具をより発達させたのではなく、ウサギなどの小型動物の狩猟にシフトしたことで人口を維持した。この様に、人類の技術や行動は必ずしも拡大成長したのでなく、柔軟な行動変化によって社会が継続したことが多い。 19世紀以降に普及した発展史観が今も一般的である。人類の歩みに対するイメージは、今後の人類の行き先の選択にも影響するだろう。人類社会が現在まで続いてきた道筋をより正しく理解すれば、私たちは持続可能な社会を実現するための新たな価値観を生み出し、行動することができるのではないだろうか。そのためにも多様な観点から人類史を見つめる必要がある。地球環境科学専攻 名古屋大学博物館 講師門脇 誠二過去の自然と人との相互関係 ―アプローチと教訓― 中塚 武 堀 和明 平井 敬 門脇 誠二(司会)

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