環未境来学の予測 研究者に対して、理想の都市とは何かと問うと、多くの場合、〜という条件下では〜のような都市が理想である、といった条件付きの回答が返ってきます。例えば、気候変動適応に関する理想都市、社会的包摂について優れた都市、経済的効率性の高い都市などを議論することは、それぞれの関連分野の研究者は得意で、地球環境問題へのアプローチとして各分野の知見を統合する必要があるため、学際的研究が環境学研究科や各地の学際的機関で進められています。一人の研究者が多数の分野の研究を同時に同じ深度で追及することは難しく、近隣の研究分野について何か意見を述べたくとも、自身の分野でない研究について議論をすることは「不安」を伴うことが多いと思います。それを都市間の関係性に置き換えてみると、自身が親しみのある都市以外について、問題点や可能性を議論することは避けられると予想されます。都市の場合、対外的な議論のみならず、対内的にも他都市と比較した自らの位置づけについて曖昧に理解されている状況では、都市という複雑な対象を前に漠然とした不安を持ち得ます。これは地域についても同様でしょう。LandScanと呼ばれる約1㎞四方の解像このような不安を解消する一つの方法として、対象を比較可能なかたちで可視化するという方法があります。下図は、各都市の周辺地域を含む約200㎞四方の範囲を切り出し、その範囲の人口分布を立体的に示した図です。データはグローバルに整備された度のものを活用しています。都市及びその周辺を含む都市地域の特徴について、この図を見る前には異なるイメージを持たれていた方もいるかもしれません。例えば、世界都市論等の中で大都市として議論されるニューヨークは、周辺も含めて見れば、中心部の密度や周辺の人口の多さでは比較的「コンパクト」な都市に見えます。各都市、各国に注目していても、グローバルな観点から示唆を抽出できる基盤となる情報があれば、「安心」して建設的かつ国際的な議論ができる可能性があります。現在、コロナ禍での緑地利用と社会・経済的格差に関して共同研究者の香坂玲教授と解析を進めていますが、可視化の長所と短所を考慮しつつ、問題の特定と解決に向けた方向性を議論する基盤の提示を目指しています。内山 愉太都市地域マネジメントについて生物多様性・持続可能性等のGISを活用した評価から、農業遺産等の地域認定制度の活用手法、多世代型の地域観光資源管理の研究に携わっている。名古屋ニューヨーク東京コルカタ学際的都市地域研究と国際的に比較可能な空間情報の活用社会環境学専攻 環境政策論講座 内山 愉太 特任講師
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