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璧ではなかったという意味で大いに注目しておきたい。さて、嫁を同じカーストから選ばねばならないとすると、相手を捜すのは至難のわざとなり、勢い通婚圏は広くなる。61人中、村内婚はわずか3人に過ぎなく、ミルジャプール郡内の他村から40人、郡外からが18人で、郡外の内7名がダッカ、シルエット、ボグラなどかなり遠方から嫁いできていた。ムスリムに近距離圏内の通婚が多かったのと対照的であった。総じて、ヒンドゥー教徒は自分と同じカーストのおおよその居住地を知っており、その情報収集のネットワークは、冠婚葬祭ないしは職業上の交流を契機としつつ、思いの外広範囲にわたっていた。彼女たちには恋愛結婚はなく、相手は両親、親戚、なかでも父親が探すのがふつうである。父親は年頃の娘を持つと日頃から相手探しに努力しているようである。ある奥さんにこの村への嫁入り理由を聞いたら、父親がこの村の近くにある慈善病院に入院している知人の見舞いに来た際に、近くに壷造りの村があると知り、そこへ散歩がてら花婿捜しに来て、候補者をみつけたという。ムスリムの女性に比べてはるかに開放的なヒンドゥーの花嫁達(女性一般)でさえ、その日常生活上の行動範囲はバリ(屋敷地)内に限られていたことは意外であった。食事作り、子育て、壺造り、そしておしゃべりとテレビ観賞が、毎日その狭い空間で繰り返されている。徒歩15分のところにあるミルジャプールの商店街や定期市へ出かけることすらほとんどない。彼女たち女性から「買い物」といった楽しみをとったら一体何が残るのであろうか、どこで買い物をするのであろうか、というのが積年の謎であった。しかし、何度も現地入りするにつれて徐々にその謎が解けてきた。その一つに「行商人」の存在が大きい。彼らがバリ(屋敷地)まで訪問販売してくれるから、居ながらにして値切りを楽しめるわけである。写真6は調査中に入り込んできたおもちゃ売りの行商人である。その他、女性が買い物する場としては祭壺造りカーストの日常 ─ 生業と通婚 ─07

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